──本書に出てくるバーテンダーのみなさんですが、それぞれ魅力的な方ばかりですね。お店に入る前に、どの程度、下調べして行かれるのでしょうか。
太田 下調べはなく、その日の出会いを大切にしました。バーには、名の通った店と、知る人ぞ知る店の二種類があるんです。
銀座で重要なのは、後者の店の大切さに気がつかなければいけないということです。
──「取材したかったけど、できなかった」というお店はありますか。
太田 あります。昔から存在のみ知っているバーで、地下二階なんですが、「会員制」と書いてあるので入れなくて、中の楽しそうな声だけをドア越しに聞いたりして。
結局そこには入れませんでした。そういう、表から隔絶したバーが銀座にはたくさんありますね。今回はそこまでは踏み込めませんでした。
──太田さんが資生堂の社員だった二十年ほど前までと、今の銀座では違いはありますか。
太田 取材三年目あたりになると、ハハア、資生堂の先輩たちはここで酒を飲んでいたんだというのが見えてきて、それが自分自身の当時の状況と重ね合わされていくんですね。これは予期せぬ体験でした。。
──太田さんは「銀座で育てられた」とも言えるのでしょうね。
太田 取材を続けるうちに自分の過去が浮かびあがってきました。自分の歴史と、その店のバーテンダーの歴史が年代的に重なり共感がわいてきたのです。共に銀座で育った仲じゃないか、と。
バーテンダーは地方出身の方が多いですが、私も地方から東京にあこがれて上京し、銀座で鍛えられましたから。銀座というトップステージで胸を張ってバーテンダーという仕事をする姿勢にとても共感するようになりました。同じ町内同士だね、と。
──本書を読んで、銀座のバーに行ってみようと思う若い人に、何かアドバイスはありますか。
太田 山口 瞳さんが書いていますが、若くても胸を張って一流店に臆せず入れ、金がなければ、一杯でいい。そして、またすぐ裏を返せば、もう立派な上客だと。銀座のバーはプレステージが高いですから、そういうところに一人で入ってきれいに飲む。味なんか分かんなくてもいい。
そういう舞台でお酒を飲んで、「ごちそうさま」と帰っていく。銀座がその舞台です。
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