書評

『ホルモン焼きの丸かじり』解説

文: ラズウェル 細木 (漫画家)

『ホルモン焼きの丸かじり』 (東海林さだお 著)

 またあるとき、東海林さんがご自身のエッセイについて語っておられる新聞のコラムを読みました。

 それによると、エッセイは書いては消し、書いては消しを繰り返しながら、ご本人もどこへ行くのかわからないときがあるぐらいライブ感覚で制作されているそうで、一見、軽妙にスラスラと綴られているような文章も、実はものすごく練りに練って書かれていることがわかりました。

 ご本人はそれがまた「楽しい」とおっしゃっておられますが、私はこのことからもまだまだだな、という思いをいたしました。

 私の場合、文章を書いていて難航するとただ苦しいばかりで、「楽しい」などといった境地からはほど遠いからであります。

 というわけで、最近は後釜などという不遜な考えはきれいさっぱり捨てて、もっぱら純粋な一読者として東海林さんの作品を楽しんでおります。

 さて、この「丸かじり」のシリーズでありますが、お店で出てくる料理や市販品に対する考察もさることながら、私がもっとも感銘を受けるのは、ひらめいたことを実際にやってみる「実践物」であります。

 本書でいうならば、「釜めし家一家離散」「鰻重グジャグジャ」「アンクリジャパンとは?」「現代の冒険水蕎麦」「豆腐丸ごと一丁丼」などがそれに該当します。

 こうしたひらめきは、私にもおぼえがあるのですが、日頃から食べ物についていろいろと考えていると、突然舞い降りてきて、いったん思いつくやもうやってみないではいられなくなるものです。

 ですから、特に努力ということは必要ないのですが、それでも、材料の調達や制作時間の確保など、即実行とはなかなかいかないものです。

 しかし東海林さんは、どんな思いつきもすぐに実践されるようで、その行動力には脱帽せざるをえません。

 そして、細かな分析と手順付きで語られますと、それをどうしても真似してみたくなってしまいます。

 特に、先に挙げた中の「豆腐丸ごと一丁丼」は、個人的な思い入れも手伝って、絶対作ってみようと思いました。

 その元になっているのは、日本橋のおでん屋「お多幸本店」の「とうめし」というメニューなのですが、実は私は東海林さんが出かけるのを面倒がっておられる「お多幸本店」までわざわざ行ったにもかかわらず、その「とうめし」を食べずに帰ってきたことがあるのです。

 というのは、某雑誌で連載している漫画のネタで「おでんはごはんのおかずになるか?」というテーマをひっさげての来店だったため、必然的におでんをおかずにごはんを食べることになり、「とうめし」の入る余地はとっても残っていなかったからであります。

 その無念をはらすべく、さっそく東海林さんのレシピどおりに作ってみました。

【次ページ】

ホルモン焼きの丸かじり
東海林さだお・著

定価:530円+税 発売日:2013年10月10日

詳しい内容はこちら