書評

「デブで何が悪いの?」ってどうなの?

文: 佐藤 和歌子 (ライター)

『アメリカン・スーパー・ダイエット――「成人の3分の2が太りすぎ!」という超大国の現実』  (柳田由紀子 著)

 じゃあとりあえず痩せればいいじゃん。

 誰しもそう思う。ダイエットが簡単ではないことはある程度知っていても、そこまで太ったら何がなんでも痩せるしかないんじゃないの、と思わずにいられない。実際、成功した例もあるにはあるのだろうけど。ドアを通れず自宅の壁を壊して病院に運ばれた肥満患者曰く、「酒や煙草の場合は、まだましじゃないかね。口にしなくても生きていけるんだから。でも、食べ物ってヤツは別。生きるために、私は1日3回食べる。そしてそのたびに、食べ続けたいという、マグマのような欲望を遮断しなければならない。ひどい話だよ。バトル! 底なし沼のバットル!!」。大枚はたいて二度の胃縮小手術を受けた患者曰く、「なぜだ? としか言いようがないよ。縫い目がすべて消えちゃうなんて。(中略)俺の食べ物に対する執着は、今も変わらない。だから、手術すべきは胃ではなく、脳だったんじゃないかと思うくらいだ」……すいませんでした。

 個々人の太り具合も凄まじいが、統計的にもすごい数字が出ている。アメリカ人の成人人口の三分の二は太りすぎ、その半分は肥満状態にあり、うち五分の一は医学的に病的肥満と分類される。ちなみに「病的」とは、身長が仮に百六十センチだとすると体重約百キロ以上。国民の十五人に一人が病的に太っている、これってどう考えても多いよなあ。十人に一人、五人に一人となっていったら、あの広大な国土もさすがに一センチくらいは沈んじゃうんじゃないか? しかし事実は想像より奇なり。体重が多い人が多い、これによって「バイバイン」的不条理が始まる。

 飛行機のシートベルトを拡張する「エクステンダー」という商品が大ヒットする一方で、そもそも肘掛けがつっかえて座れない人もいるわけで、航空会社を相手どった訴訟が起きる。シートベルトを拡張したところで必ずしも安全は保証されないとして、頑なに「エクステンダー」の開発販売を拒んでいる自動車会社もあるという。人権侵害?  たしかに。太っている、ただそれだけで飛行機や車に乗れないなんて。だけど、仮に二百キロの客に対応できる座席を備えたところで、三百キロの客が現れたら、どうすりゃいいの。

アメリカン・スーパー・ダイエット
柳田 由紀子・著

定価:1000円(税込) 発売日:2010年07月15日

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