書評

「デブで何が悪いの?」ってどうなの?

文: 佐藤 和歌子 (ライター)

『アメリカン・スーパー・ダイエット――「成人の3分の2が太りすぎ!」という超大国の現実』  (柳田由紀子 著)

  量が多いということの恐ろしさを、一番最初に感じさせてくれたのは『ドラえもん』の「バイバイン」という話だったかと思う。かけると五分間で二倍に増えるという液体薬品で、ドラえもんとのび太は一つしかない栗まんじゅうを二人で分けるために「バイバイン」を使う。二つに増えたところで仲良く食べてしまえば、それきり問題は起きなかったはずなのだが、欲を出したのび太は自分の分の栗まんじゅうをさらに寝かせる。五分間で倍になるということを試しに計算してみると、一時間で2の12乗=4096。とても食べきれなくなって、最終的には宇宙の彼方に捨て去るというのがこの話のオチ。

 捨てられた栗まんじゅうはその後どうなるのか、宇宙は無限に広がっているらしいからいくら増えても大丈夫なのかもしれないけど……子供心になんとも言えない、オチのつかない気分になったのを覚えている。宇宙空間で無限に増殖していく栗まんじゅう、それはもはや栗まんじゅうとさえ呼べないのではないか、少なくとも私の知っている栗まんじゅうではない。

 アメリカという国を肥満という側面からルポルタージュした『アメリカン・スーパー・ダイエット』、一読して抱いた印象がこの「バイバイン」的不条理だ。アメリカ人は太っている、太った人が多いということは日本でも広く知られている。とはいえまさか、そんなにまで? ものには限度があるでしょう。そんな常識論は屁の突っ張りにもならない実例の連発。Aさんは真冬でもいつもサンダルを履いています。なぜでしょう? ある日Bさんの自宅の壁が壊されました。三年後にもまた同じ壁が壊されました。なぜでしょう? Cさんは母親の葬儀に駆けつけるため飛行機のチケットを予約しました。飛行機もCさんも時間どおりに動いていたのに、Cさんは葬儀には出られませんでした。なぜでしょう? そう、答えは全て肥満。AさんもBさんもCさんも、みんな太りすぎだったからです! なんたることか。

アメリカン・スーパー・ダイエット
柳田 由紀子・著

定価:1000円(税込) 発売日:2010年07月15日

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