従来の経済理論が通用しない。
ところで、いま日本では「アベノミクス」に沸いている。
3ヶ月前に比べると日経平均株価は26.41%増だ(2月18日現在)。その原因はなによりも円安である。
円が安くなったとは、裏を返せばユーロが高くなったということである。実際、あっという間に120円を超え、対ドルも高止まりだ。
EU危機が深刻化したのは、ユーロのせいで、各国が独自の通貨政策をできず、通貨を切り下げられないからだったというのが通説である。
ユーロはいまも存続している。しかも「切り下げ」とは正反対のユーロ高である。だから、この説に従えばギリシャやスペインの株価が上がるはずはない。
ところが、スペインの株価(IBEX35)は、この6ヶ月で8.79%増、ギリシャ(ATHEXアテネ総合指数)に至っては62.41%も上昇している。
もうひとつ、「アベノミクス」の目玉に、2%のインフレ目標がある。
いま、欧州中央銀行が用いているEU統一基準物価指数(HICP)でギリシャのインフレ率をみてみると09年は1.3%、10年4.7%、11年3.1%、12年は1.0%である。
スペインは、09年マイナス0.2%、10年2.0%、11年3.1%、12年2.4%(Eurostat による)。
もし、インフレ率と株価が景気回復のバロメーターだとすれば、ユーロ圏はとっくに危機を克服したはずだ。
だが、成長率は低迷しており失業も減らない。財政健全化のために国民は負担増と賃金や社会保障の低下にあえいでいる。トンネルの出口はまだまだ遠い。
理屈と膏薬はどこにでもつくというから、この矛盾を説明することはできるのだろう。しかしそれは事実を無視して理論を擁護する作業でしかないのではないか。
経済理論が間違っているのだろうか? そうではないと思う。前提となる時代・環境が決定的に変わったのだ。
投機筋の先には、従来の経済理論が通用しなくなった世界の変化がある。それをしっかり見据えなければ危機の本質はわからない。大切な将来の対応も誤る。
フランスのみならずユーロ圏各国では、いまや党派の別を越えて、この世界の変化と対策の必要性がコンセンサスになっている。
EU危機はけっして対岸の火事ではない。
とくに、国家債務の大きさだけでなく、政治も行政もすでにギリシャ化している日本にとっては。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。