地方都市に住む17歳の女子を、それぞれ主人公に据えた短篇5作を収めた『17歳のうた』。大人でも子どもでもない女性の心情をあざやかに切り取った、著者の坂井希久子さんにお話を伺いました。
ナメられたら終わり、のヤンキーを描く
――京都の舞妓、山形のローカルアイドルなど、日本各地のまったくタイプの違う女の子を方言も交えつつ書き分けられていますが、特に福岡のマイルドヤンキー女子を描いた「We are the Champions」がとてもリアルで印象的でした。
坂井 ヤンキーの話、私も好き。中学のとき、ヤンキーが多い学校に通っていたので、なんとなく様子が分かるんです。彼ら・彼女たちはエネルギーが身体のなかに渦巻いてて、たまにちょっとよく分からないことやっちゃうんですよね。「え? なんで今、素手でガラス割ったの?」みたいな。なんか大変だなあって思いながら見ていました。
――ナメられたら終わり、というヤンキーの精神性にも触れています。主人公のマリエは同じグループの女に彼氏を寝取られ、それをSNSでぼやいたら周囲が過熱して大ごとになってしまうのですが、元レディース総長のマリエの姉が言った「アタシがボコボコにせんと収まんねぇことのあるったい」という台詞が、ある意味、すごく健全なもののように思えました。
坂井 この話を書いているとき、川崎や東松山の集団リンチ殺人も頭にあったんです。あの事件に関わった人たちって、その場では自分が何をやったか分かってないんですよね。みんながやってるから、やらないとそのあとの標的にされるから、という理由で手を出しているうちに、漫然と事態が進んでしまっている。このままだとどうなってしまうか、というところまで考えが至らないんです。もし上の立場で締められる人がいたら、と思いながらこの話は書いたところもありました。
教室の天井が、突然落ちてきたらいいのに
――作中では様々なタイプの女子を書かれましたが、坂井さんご自身はどんな17歳でしたか?
坂井 地味な子でしたね。でも、授業中になんとなく、教室の天井落ちてきたらいいのになあ、とか思っていました。
――破壊的というか、破滅的ですね……。
坂井 うーん、この先いろんな可能性があるんだけど、そういう明るい可能性に目を向けられない感じの気分はあって。人間って、自分が今若いって思わないで生きてるでしょう。いままでの時間のなかで、今の自分がいちばん年をとっているから。17歳にして「いろいろと生きてきたなあ」って、そんな気がするじゃないですか。大人からすると「何言ってるんだ」って感じなんですけど。
――大人になると解消する種類のしんどさもありましたよね。
坂井 そうですよ。私、絶対高校生に戻りたくないですもん。基本的に、20代より10代のほうが、がんばってたと思うんです。まわりとの付き合いとかも、真摯に、真面目に、がんばろうとしてた。学校にも決定的に合わない人間っていうのはいて、今だったらぱっとみて「あ、この人とは合わないわ」と思ったら、それなりの付き合いに変えていけるじゃないですか。でもあのころは、いちいち頑張っちゃってたから。先生も選べないしね。
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