- 2019.05.31
- 書評
17歳のときにこの小説に出会っていたら……5人の少女たちへの願いとエール
文:枝 優花 (映画監督)
『17歳のうた』(坂井希久子 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
17歳の頃の自分を思い返そうとしてみるが、案外難しい。常に今の自分が邪魔をする。あの頃感じていた不安や焦りが、今となっては「たいしたことがない」「時間が解決するさ」なんて言えてしまう。悩んでいる17歳を見ると「若いねえ」と声をかける。これが所謂(いわゆる)〈大人になってしまった〉ということなのだろうか。胸がざわつく。
思えば当時の私は「若いねえ」と大人に言われることが酷く苦手だった。私が若いことと、貴方が私の気持ちをわからないことはイコールにならないじゃないか、と尖っていた。
先日、「レディ・バード」という映画を観た。17歳の少女が進路や恋や友情に悩み、母に反抗しながら今を生きていく話だ。私はどこか彼女たちを俯瞰して観てしまった。見かけの良い男の子に恋をする主人公を観て「ああ、何となくいいなというだけで好きになってたなあ。私も」と。母に反抗して車から飛び出す主人公を観て「きっと10年後に母の気持ちがわかるさ」とも。エンドロールで、そんな風に離れて観てしまった自分に気づき、ショックを受けた。若い子を分かったように扱う大人と出会う度に「こんな大人には絶対ならないんだ!」と思っていた私はどこに行ったんだろう。
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