- 2013.04.25
- インタビュー・対談
「ニュースがわからない」不安を解消
「本の話」編集部
『池上彰のニュースから未来が見える』 (池上彰 著)
出典 : #本の話
ジャンル :
#ノンフィクション
,#政治・経済・ビジネス
――この本は主に2012年の世界のニュースを池上さんが根本から解説したものです。日々のニュースをよく理解することで、未来の動きが予測できるようになりますね。
池上 2012年は領土問題に象徴されるように、国際的な摩擦、緊張が強まった年でした。私は前年までのニュースからそう予測していたのですが、まさにその通りになりましたね。2012年は世界各国のリーダーの選挙の年。政治家は国内の支持を得るため、対外強硬策に出るものだからです。韓国前大統領の竹島上陸もその一例ですね。政権末期の支持率を押し上げておかないと、退任後の立場が危うい。ただ、日中関係の悪化は予測以上でした。中国は習近平が国家主席になる段階で、日本に妥協的な態度をとれば致命的です。安倍晋三氏も、中国に強硬な態度をとることで支持を得て、総理総裁の座に返り咲いた。日中双方に要因がありました。
逆に、ロシアのプーチン大統領のように圧倒的な支持を得て当選すると融和的な政策を取りやすくなる。北方領土問題の進展があるかもしれません。
――では2013年はどうなると見えますか?
池上 リーダー交代が終わったので、関係改善への模索が続くでしょう。例えば中国では、知日派(親日派とはいいませんが)の王毅・元駐日大使が外務大臣に就任。これ以上、日中関係を悪くしないという国家意思がうかがえます。軍部が強硬なのですぐに関係改善とはいかないでしょうが。
オバマは2期目に入りました。米大統領は2期限り。もう選挙の心配はないので何でもやれます。1期目は再選を意識するので、反対勢力が多い銃規制に着手できませんでしたが、2期目に入った途端、再び銃規制を言い出しました。さらに2期目は「歴史に名を残したい」という欲が出るもの。イスラエルに行ったのも、中東問題を進展させたいからでしょう。
――日本、安倍政権はどうなっていきますか。
池上 安倍首相は前回の政権時はやることなすこと裏目に出ましたが、アベノミクスも今のところはうまくいっています。しかしこれは運に助けられている面も大きい。その「運」を参議院選で使い切ってしまわないかどうか。
中国、韓国との関係改善に安倍首相が取り組めば、党内の反対を抑え、うまくいく可能性があります。中国は交渉相手にタカ派、強いリーダーを好みます。たとえば1971年のニクソン・ショック。中国を電撃訪問したニクソン大統領が共和党タカ派だからこそできました。日中平和友好条約も、親台湾派である福田赳夫首相が台湾を切り捨てる決断をして、締結しました。安倍さんも老獪になって、靖国参拝など中国を刺激する発言を、政権奪取後は急に控えていますね。