2011.10.19 書評

上手に生きて死んでいくコツ

文: 帯津 良一 (帯津三敬病院名誉院長)

『〈達者な死に方〉練習帖――賢人たちの養生法に学ぶ』 (帯津良一 著)

 私が医者になって半世紀になります。若いころは、食道がんを専門とする外科医として、自分たちの手でがんを撲滅するんだと張り切って医療と取り組んでいました。しかし、いくら会心の手術をしても多くの患者さんが再発で病院へ戻ってきました。これには、無力感を感じました。その後、私は中国医学を学びました。漢方薬や鍼灸、気功をがん治療に取り入れることにしたのです。病院を開業したときにも、院内に気功のできる道場を作りました。当時は、どうして病院に道場があるのかと、いぶかしがられ、私が、道場で気功をやっているときにも、患者さんは「院長は何をやっているんだろう」と遠巻きに見ていました。

 西洋医学と中国医学を併せた中西医結合医療をしばらくやっていましたが、それではまだ足りないものがあると思っていたときに、ホリスティック医学にであいました。ホリスティック医学というのは、人間全体を見る医学で、アメリカから日本に伝えられたものです。死後の世界まで含めた、非常に幅が広く奥深い医学ということで、私も非常に興味をもったし、期待もしました。

 がん治療は、西洋医学だけでなく、東洋医学や民間療法などの代替療法が注目されるようになり、今ではさまざまな治療法を駆使してがんを治そうという統合医学が広がりつつあります。ただ統合医学も、現時点ではさまざまな治療法を組み合わせるというレベルにとどまっています。「統合」というのは、寄せ集めるということではなく、一つひとつの要素をバラバラにして、それをまったく新しいものとして再構築するという意味で、簡単に実現できるものではありません。ホリスティック医学はその先を行く医学です。統合医学よりもさらに難しく、方法論というと、ないに等しいのが現実で、私もまだまだ模索の段階を超えることはできません。

 日本には、古くから「養生」という言葉がありますが、非常にホリスティック医学に近い概念です。もっとも、現代人にとっては、養生というのはとても古い言葉に聞こえるかもしれません。それに、多くの人にとって、養生というのは、健康長寿の方法だと見られている節があって、そういう意味では、死とか死後の世界まで対象にするホリスティック医学とは程遠いものです。

 私は、養生には2種類あると考えています。ひとつが消極的な養生、もうひとつが積極的な養生です。多くの人が考えている、健康長寿の方法というのは消極的な養生です。それに対して、積極的な養生は、まさにホリスティック医学で、生命(いのち)の場を高めていくものです。

〈達者な死に方〉練習帖
帯津良一・著

定価:756円(税込) 発売日:2011年10月20日

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