- 2010.08.20
- 書評
家族のピンチを乗り越える、がん看病の副読本
文:はにわ きみこ (ライター)
『親ががんだとわかったら 家族目線のがん治療体験記』 (はにわきみこ 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
老齢の親が病気になったとき、家族は何をするべきなのか。参考になる本がないのがつらかった。健康雑誌でライターをしている私でも、困ったこと、悩んだことは多かったのだから、もしかして、父の看病記録は、同じ境遇に陥った人たちの役に立つかも知れない。そこで、看病の渦中にいた私自身が「こんな本があればいいのに!」と感じた内容を本書にまとめた。
がん患者とその家族は、暗い気持ちになりがちだ。まじめな人ほどがん関連書籍を山のように読んで、さらに暗くなってしまう。だから本書は「実践的な内容がサッとわかる」本、「明るく読める」本にした。
検査内容や入院のお役立ちグッズはイラストで図解、1項目は見開き2ページ。本文で我が家の体験を描き、末尾に普遍性のあるアドバイスを添えている。
当時、私は全力で父の治療をサポートしたが、その頑張りが仇(あだ)になることもあった。その部分も含めて執筆しているので、よいところは参考に、失敗した部分は教訓になるのではないかと思う。
父のがん発覚から、手術、退院までの5ヶ月間。私たち家族は力を合わせ、がんとの短期決戦にのぞんだ。その戦いは、父が勝利をおさめたと言えるだろう。がん発覚から1年が過ぎ、父は、元気に庭仕事ができるほど回復している。
がんの治療中は大変だったが、発見もあった。がんが、家族の関係を見つめ直すきっかけになったのだ。それは、毎日一緒に過ごした子ども時代とは違う、家族としての新たな関係性である。大人になり離れて暮らすことで、私たち親子の間には気持ちの上でも距離ができていた。しかしこれからは、手術を経て変わった父の生活や、それを支える母を、今までよりもう少し近い距離でサポートしていく。
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