書評

家族のピンチを乗り越える、がん看病の副読本

文: はにわ きみこ (ライター)

『親ががんだとわかったら 家族目線のがん治療体験記』 (はにわきみこ 著)

「お父さん、食道がんなんだって」

  母からの電話に、一瞬、気が遠くなる。

  例えるならば、ブツッという音とともに電源が落ち、モニターが真っ暗になったパソコンのようだ。もう72歳なのだから何があってもおかしくはない。だけど、丈夫な身体が自慢の父だったのに……。「がん=死」というイメージが、心臓をギュッと絞って呼吸を苦しくさせる。

  いや、ちょっと待て。私でさえ、こんなにショックを受けるのだ。父はもっと動揺しているだろう。それを支える母だって、どうしていいかわからないはず。いつまでも私がフリーズしているわけにはいかない。

  再起動した脳は「娘である私は何をするべきか」を考え始めた。

  父母はインターネットや携帯メールが使えない。私が代わりにできることはいくらでもある。父のがんがわかってからは、次から次へとやるべきことが押し寄せた。

  それは、悲しみにひたる時間もなく、矢継ぎ早に選択を迫られる日々だった。調査をし、情報を手に入れ、それを理解した上で父母にわかりやすくプレゼンテーションし、納得のいく決断をうながす。この時期、私は、患者(父)と看病する人(母)の専属マネージャーとして動いた。

  がんの進行度は精密検査をしなければわからない。結果が出るまでの間、つい悪い想像をしてしまうこともあったが、やるべき事のリストを作り、それに全力で取り組んでいる間は、案外、冷静でいられた。

  それでも困惑はある。心配なのは治療のことだけではないのだ。
  
  手術を受けたら、父の身体はどう変わる? 

  治療費はいくらかかる? 

  父母には今どれだけのお金があるんだろう? 

  私や妹は、何日仕事を休めばいいの? 

  どんな言葉で父母を励ましたらいい? 

  入院前後の自宅療養には何が必要? (我が家の場合は不要品処分とリフォーム作業が必要だった)

  もしもの場合、お葬式やお墓はどうする?
  

親ががんだとわかったら
はにわ きみこ・著

定価:1300円(税込) 発売日:2010年08月27日

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