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日系人の歴史を記録した<br />映画監督の体験的アメリカ論

日系人の歴史を記録した
映画監督の体験的アメリカ論

文:すずき じゅんいち (映画監督)

『1941 日系アメリカ人と大和魂』 (すずきじゅんいち 著)


ジャンル : #ノンフィクション

日系人を通じてニッポンを理解する

 より日系人を知ることは、より自分のルーツを考えることであり、日本人としての自分を自覚させることでもあった。日本にいたのでは、こうしたことはほとんど思いつきもしない。

 と同時に、アメリカや日本という国を第三者の目で見させてくれるキッカケにもなったと思う。20年ほど前にニューヨークにも1年間住んでいたが、日系人と親しく接する機会はなく、そこは外国の一都市に過ぎなかった。北アフリカのモロッコにも、30年近く前に1年間住んだが、当然日系人とは出会わなかったから、そこも単なる外国に過ぎなかった。

 しかし、ロサンゼルスで自分を、そして日本人を考えることが出来たのは、ひとえに日系人との出会いのおかげだったと思うのだ。彼らはある面、日本人の原点のようなものを持っているので、ハッとさせられる発見がある。それはあえて言えば「大和魂」と言えるかもしれないような、現代の我々から失われてしまった精神性なのだ。

 機会があれば皆さんも日系人から話をお聞きすることを、ぜひお勧めしたい。また、より簡単に彼らのことを知るには、ボクの映画三部作をご覧になっていただければと思う。ちなみに3作目の映画『二つの祖国で』は今年の12月8日、つまりあの真珠湾攻撃と同じ日から全国主要都市で公開が始まる。

 そして、もっと簡潔に、面白くそれらについて知ることが出来るのが、本書『1941 日系アメリカ人と大和魂』だと思う。

 この本には、三部作映画の取材で出会った多くの日系人元兵士の貴重な証言が収められている。また、11年間のアメリカ生活とそこで出会った日系アメリカ人のこと、現代アメリカの良さ悪さも書かれている。特に442連隊のラスベガスでの同窓会にご招待を受け、会場に向う途中の交通事故で死にかけ、アメリカの医療システムと保険制度の欠陥を実体験したことは詳しく書かせてもらった。

 そして世界の映画史でも恐らく空前絶後であろう、「監督の監督」とクレジットタイトルを与えられた、女優の我が奥様、「榊原るみ」のことについても触れている。

 11年間アメリカに住み、時々日本に戻ったり他の国々を旅して感じたのは、良い悪いはともあれ、間違いなく世界が「アメリカ的」になろうとしているということだ。

 本書はそうしたことに触れながら、日系アメリカ人を通じて日本人を語り、そして、日本と世界の転換点となった太平洋戦争の歴史から現代を逆照射して語るものになっている。

1941 日系アメリカ人と大和魂

すずきじゅんいち・著

定価:1575円(税込) 発売日:2012年09月13日

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