- 2012.09.14
- 書評
日系人の歴史を記録した
映画監督の体験的アメリカ論
文:すずき じゅんいち (映画監督)
『1941 日系アメリカ人と大和魂』 (すずきじゅんいち 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
アメリカに11年住んだ。この間、日系アメリカ人の第2次世界大戦時の歴史を描いた長編記録映画三部作を撮ったことは、多少なりとも意義のあった仕事だったと思う。
日系アメリカ人については、ほとんどの日本人は知らないし、良く理解されているとも言い難い。だから、記録として残すには、この時代を生きた方々がご存命のときでないと無理だし、それは今をおいてないと考えたのだ。
日系史映画三部作とは、最初の作品が、有名な写真家である東洋宮武(とうようみやたけ)の500枚以上の写真を中心に、米国本土での日系人への差別的な強制収容を描いた『東洋宮武が覗いた時代』。次が欧州戦線で大活躍し、戦後、日系人の米国内での地位を上げるキッカケとなった『442 日系部隊』。そして3作目が、米軍日系秘密情報部員たちの太平洋戦線での日本軍との戦いと、彼らの戦後日本での復興に果たした役割を描いた『二つの祖国で・日系陸軍情報部』の3本である。
日系人関連の映画3本を作り続けてきたこの7年間は、毎日が「戦争」と「日系人が被った人種差別の苦難」、さらに言えば「今日の世界情勢」について考え続けた日々でもあった。
ロサンゼルスに住み、多くの日系アメリカ人と出会った。彼らと親しくなり、日系人の歴史を自分があまりに知らないことに気づき、呆然とした。
そこで、自分の専門である映画で彼らの歴史を分かり易く語り、ボク同様に日系人の歴史を知らない多くの日本の人に知ってもらうのが、日系人の多い土地に偶然住んだ自分の、監督としての務めかもしれないと思うようになったわけだ。
日本軍の真珠湾攻撃によって始まった、何十万人かの日系アメリカ人の苦渋の歴史を日本人はほとんど知らない。困った事に、学校ではそれを教えないから知らないのも無理はない。
しかし、彼らのことを知れば知るほど、これは縄文式土器や弥生時代の生活などを知るより何100倍も、現代の日本人が知っておくべき必要不可欠な歴史であると実感したのである。
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