- 2014.08.06
- インタビュー・対談
対談 石持浅海×水谷奏音
1度目は熱い官能小説として、2度目は怜悧な本格推理として再読を愉しめる『相互確証破壊』
『相互確証破壊』 (石持浅海 著)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
アイデアの浮かび方
水谷 第2話の「相互確証破壊」も不倫、これはダブル不倫の話ですね。
石持 最近、別れた配偶者や恋人の映像をネットに流出させる「リベンジポルノ」が問題になっていますが、そこからミステリーのアイデアを得ました。
水谷 発想は簡単に浮かぶんですか。
石持 私の場合、道を歩いていてふと思いつく、というようなことはまずないです。基本的には机の前で考えに考えた末にでてきます。
水谷 この新刊で何冊目になられますか。
石持 36冊目です。
水谷 年に3、4冊くらいお出しになっていらっしゃる。すごいペースですよね。お勤めもしながら、いつ執筆していらっしゃるのですか。
石持 会社から戻ると7時半くらい、食事や入浴をすませると10時にはなるので、そこから深夜1時半くらいまでですね。
水谷 週末は全然やらないんですか。
石持 子供がまだ小さくて家族サービスがあるので(笑)。フィジカル的には土日のほうが疲れるのですぐ眠くなる。
水谷 会社員、作家、お父さん、そしてもちろん夫、といくつも顔をお持ちですね。わたしは商社に8年勤めていたのですが、たぶんそれもあって、石持さんの作品が好きなのだと思います。
石持 部署名がリアルだとはよく言われます。商社にお勤めだったら第4話「見下ろす部屋」の、貨物船が沈んだのに保険に入っていなかった、という時の恐怖をリアルに実感していただけたのではないでしょうか。
水谷 わかります。この作品でも男の弱さと女の強さの対比がはっきりと描かれていますね。
石持 「見下ろす部屋」は、鉄道特集だから官能ミステリーに鉄道も絡めてほしい、という注文を雑誌編集部からいただきまして。
水谷 依頼されたら受ける、というスタンスでいらっしゃいますか。
石持 時代小説とか、能力的に絶対に無理なもの以外は受けます。この時は、鉄道の出てくる官能小説、というと車内の痴漢を普通発想するので、そうならないように、しかもそれほど鉄道に詳しくない自分がどう書けばいいか、と考えて、線路が窓から見えるホテルの部屋、という舞台を思い付いたんです。
水谷 この作品は、鉄道会社への問題提起ともなっていますよね。
石持 ホームの非常ボタンは、頭をぶつけそうな場所に結構あるんですよ。
水谷 このヒロインの思い切りも凄かった。
石持 通常のミステリーでは、推理は関係者一同を納得させないといけないんですね。でもこの作品や、ある種のミステリーでは、主人公一人が納得すればいい、もしくは主人公と相手だけが納得すればいい、ということがあるんです。官能小説は非常にプライベートな関係を書いていますので、ここではヒロインが納得すればいい、正しいか正しくないかはたいして問題ではないんです。
水谷 女性からみてもこんなふうに割り切る女性はいません(笑)。
石持 女性を描くときに理詰で判断するキャラにする癖が私にはありまして。
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