2010.05.20 書評

スピリチュアルブームの終焉

文: 樫尾 直樹 (慶応義塾大学准教授)

『スピリチュアル・ライフのすすめ』 (樫尾直樹 著)

「スピリチュアルってよくわかってるつもりだったけど、そういうことだったんですね」

  最近ハマっているアメーバブログのピグともが、そう感慨深げに言っていた。

  たまたま「おでかけ」した「代々木公園 アラフォー広場」で出会った女性だが、私が、「スピリチュアル」や「スピリチュアリティ」というのは、霊に影響を受けている状態ではなくて、人間の自己超越意識のことだ、と説明したときの反応だった。自己超越意識とは、坐禅やその他の瞑想、呼吸法などの身体実践によって実感される、自分と他者との一体性の意識である。 「スピリチュアル」に興味のある人たちに、「霊」ではなく、「意識」のあり方として「スピリチュアル」を説明すると、それなりに了解してもらえることが少なくない。それは、彼らの多くは、じっさいに霊や神に会ったことがないからである。

  とはいえ、七〇年代以降から現代まで続くオカルト番組などの影響によって、漠然とした――しかし、それゆえ心にこびりつく――霊魂観や他界観が植えつけられてきたので、なんとなく霊の実在を疑えない体質にされてきた。

  そして、二十一世紀に入ると、そうしたオカルト的な世界観を「スピリチュアル」という言葉で表現する人が出現してきた。それが江原啓之氏である。彼が「スピリチュアル」という言葉に刻印した意味は、依然として多くの日本人の心にへばりついている。江原氏の言う「スピリチュアル」とは、「霊的存在は実在していて、私たちはその影響を何らかの形で受けている」というものだ。

  私が、本書で一番言いたかったのは、スピリチュアルブームで半ば「洗脳」されてしまい、「スピリチュアル」の間違った理解をしている人に、じつは「スピリチュアル」というのはそういうことではない、ということである。

スピリチュアル・ライフのすすめ
樫尾 直樹・著

定価:756円(税込) 発売日:2010年05月20日

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