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〈特集〉桐野夏生の衝撃 キューバ旅行同行記

〈特集〉桐野夏生の衝撃 キューバ旅行同行記

文:大沼 貴之 (「オール讀物」編集部)

出典 : #本の話
ジャンル : #随筆・エッセイ

〈特集〉桐野夏生の衝撃
〈インタビュー〉強い虚構性は現実と拮抗しうる 桐野夏生
桐野夏生の「小説=世界」のマニフェスト 佐々木敦
私の好きな男 桐野夏生
・キューバ旅行同行記 大沼貴之
桐野夏生 著作年譜

「キューバに行くことになったのですが、大沼さんも宜しければ」

 と、桐野夏生さんからお誘いを受けたのは、忘れもしない六月四日。「オール讀物」新編集長就任の挨拶をかねた会食の席でのことでした。

 桐野さんのオフィスで働いていたTさんがキューバにダンス留学しているので、その生活ぶりを覗きに行こうというもの。出発はその一カ月後と決まりました。

 私たち一行は、コンチネンタル航空でヒューストンへ行き、そこで乗り換えてメキシコのカンクンへ。そこからメキシカーナ航空でハバナへ向かうことに。

「桐野さん、キューバってどんなところなんでしょうね」

「社会主義国なのに、米軍の基地がグアンタナモ・ベイにあるんですって。それに、レイナルド・アレナスって作家がいてね、この人の自叙伝がね……」

 と、桐野さんはインターネットなどで、キューバの情報を入念にチェック済み。識字率が高いとか、ゲバラはカッコいいかなど、話は尽きることがありません。

 行きのフライトは、米国の入国審査に思いの外時間がかかり、飛行機に乗り遅れそうになるというトラブルはあったものの、深夜無事にハバナの空港に到着。夜遅くにも拘わらず、Tさんがボーイフレンドのパピートと一緒に出迎えてくれました。

 翌朝、ホテルのレストランへ行くと、すでに桐野さんはすっかりお化粧もすませて、朝食中。本日の予定などを話していると、遠くから「ぐぁんだらめら あにだ ぐぁんだらめら~」と歌いながら、トリオ・ロス・パンチョスみたいなおじさんたちが近づいてきます。

「うぁ、何、面白い」

 と、桐野さんは大喜び。私たちも、「さすが、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの国ですねえ」と、朝食もそっちのけに、撮影大会となりました。

 午前中はホテルの周りを観光することに。まずは博物館見学。つぎに美術品を売っている店に入り、路上で売っているレース編みの帽子や洋服を覗き、チェ・ゲバラのTシャツや絵葉書を買ったりと、観光からいつのまにかお買い物タイムとなりました。

 その日の夜は、ハバナ最大のキャバレー「トロピカーナ」へ。ここの目玉は大ステージで繰り広げられるダンスショーです。鍛えられたダンサーが、カナリアのような衣装をつけて、踊り歌います。およそ二時間のショーが終わると、ステージはディスコタイムとなり、観光客も踊ることができます。ダンス留学をしていたTさんとパピートのリードで、桐野さんも私たちも、その日に飲んだお酒が抜けるぐらい踊って、ホテルへ。

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