インタビューほか

座談会「小沢昭一さんの正体」#1

加藤 武(俳優),矢野誠一(劇評家),三田 完

『あしたのこころだ』(三田 完 著)

『あしたのこころだ』(三田 完 著)

 三田 気配を消すというか、その場の背景に溶け込むのがお上手なんですよね。ある方のエッセイで、小沢さんが下北沢で歩いているのを見たけれど、完全に街の風景と同化していて凄いという文章を読んだことがあります。それから、ラジオの収録が終わったあと、一緒にTBSから赤坂見附駅まで歩いていても小沢昭一が歩いていると気付くひとはあまりいないんです。あれは不思議でした。それは昔から素地があったんですね。

 加藤 麻布中学って、一年生の二学期から成績順に席が変わるんです。トップから順に後に坐る。僕は五十人中三十何番で前から三列目くらい。芝居だと一番いい席です(笑)。小沢は後ろのほうでしたね。

 矢野 僕も麻布の出身ですが、僕らのときはもうそういうシステムじゃありませんでした。

 加藤 もともと小沢は府立一中を受験したんだけど、入学試験のときにはしゃいで電球を割ったとかで落ちたらしいんですよ。僕も府立三中に落ちて、麻布を受けた。麻布は落ち武者たちのたまり場だった(笑)。

 三田 特に加藤さんの学年は、劇作家・脚本家の大西信行さん、俳優の仲谷昇さん、作家で精神科の医師でもある、なだいなださん、フランキー堺さんなど、多士済々で有名です。

 加藤 毎日が寄席に行っているみたいな楽しさでした。特に二年のときにフランキー堺と同じクラスになって、そこからぐっと面白くなった。瞬間芸みたいなことはやる、落語もうまい。そのとき小沢は別のクラスだったんだけどフランキーばかりが注目されるのが面白くなかった。彼がウケているときに、プルルルン~と変な音がする。見ると小沢がハモニカを持って立っている。俺にはこの芸があるんだぞというところを見せるんです。

あしたのこころだ三田 完

定価:本体700円+税発売日:2018年12月04日


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