インタビューほか

座談会「小沢昭一さんの正体」#3

加藤 武(俳優),矢野誠一(劇評家),三田 完

『あしたのこころだ』(三田 完 著)

【2よりつづく】

『あしたのこころだ』(三田 完 著)

人を惹きつける能力

 三田 こうしてお話をうかがっていますと、小沢さんの素顔はすごく立派な大人なんですよね。きちんとした大人が、エロ事師に身をやつしておられる。そうそう、本にも書きましたが、「小沢昭一の小沢昭一的こころ」に三十年以上かかわり、番組内で“ノー天気プロデューサー”として話題に上がる坂本正勝さんという方がいます。

 矢野 TBSを退職したあとも、番組にかかわっていらっしゃった方ですね。

 三田 そうです。“ノー天気”というのはだいぶデフォルメされているのかと思いきや、坂本さんは旅に出て、切符を買い直すとかがまったく出来ない人なんですよ(笑)。そういう時に、部屋割りやらなんやらをやってくれたのが小沢さんだったという話を聞いて。相当に立派な社会人ですよね。

 矢野 坂本さんは結局、小沢さんのために一生を捧げちゃった人でしょう。宝塚のスターでも、超大物には必ずそういう周りの人がいます。

 三田 また、小沢さんも坂本さんのことが大好きだったんだと思います。年に一回スタッフを集めた忘年会を赤坂の中華料理店で小沢さんが開いてくださるんですが、坂本さんがいつもお酒も飲まないで異常にはしゃぎだすんですけど、それを小沢さんはほんとに嬉しそうに見てるんですよ。

 矢野 この人に人生を捧げるっていうのはなかなかできることではありません。そういう人を惹きつけるものが小沢さんにはあるんですよね。

 三田 面倒見もよくて、お若いころ、俳優の佐藤慶さんの相談に乗ってらっしゃったりとかいろいろしてるんですね。

 加藤 ほかにも小沢は演出家・俳優の早野寿郎とも仲が良くて。

 矢野 小劇場活動の先駆けの人ですよね。早野さんは。

 加藤 新劇という概念を打破した人です。

 矢野 僕、演劇雑誌の『悲劇喜劇』に短い文章ですが、早野さんのことを書いたことがあって、そうしたら小沢さんが本当に喜んでくれて。「早野の仕事というのはちゃんと記録されてないんだよ」っておっしゃって。

 三田 そういう細かい目配り、思いやりもきちんと持っている人だったんですよね。



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