何と心弾む再会でしょうか。とうに忘れたと思い込んでいたあれやこれやが、次々とよみがえってきます。土手を転がり下りながらかいだ、シロツメクサのにおい。お向かいの鉄工所のおじさんたちが手にしていた、鉄のお面へのあこがれ。図書室で借りた本を一刻も早く読もうと、わき目もふらず走って帰る私の背中で、カタカタ鳴っていたランドセルの音。それら記憶の底に潜んでいたものたちが、中川さんの言葉でそっとすくい上げられ、心の湖の水面まで浮上してきました。久しぶりに思い出してみると、何一つ損なわれることなく、あまりにも生き生きとしているので、新鮮な驚きを覚えるほどです。
この再会が幸福なのは、中川さんが子どもという存在を全肯定しているからだと思います。条件は何もありません。そこに子どもがいる。ただそれだけのことが尊いのです。中川さんの肯定の仕方は宇宙的です。どっしりとして揺るぎがありません。温かい両手に守られていながら、少しも窮屈ではなく、それどころか心はどこまでも果てしないところを旅しています。まさに、絵本を読んでもらっているのと同じ安らかさです。
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