

一九六七年、福音館書店から毎月届く絵本「こどものとも」の二月号『だるまちゃんとてんぐちゃん』を手に取った瞬間、なんと珍妙な! ハテナ こんな絵本は初めて! 変ってる! と、呆気に取られながらも興味津々 ハテナ ハテナ
手も足もある赤いだるまと白装束のてんぐが向かいあって、ジャンケンの真剣勝負。二人におひげはあるものの、大人なのか子どもなのか、ハテナ
「加古里子さく/え」とある。さとこではない、さとし。ふり仮名がなかったら女性かと思うペンネームが、無学の私にとってはいつもハテナ
加古さんが東京大学工学部を出た工学博士で、川崎のセツルメントで労働者住宅の子どもたちと係わっていたこと、セツルとの絆は固く、多忙な要職にありながら紙芝居や遊び、遊び唄にくわしく、そして『だむのおじさんたち』『かわ』『海』など質の高い科学絵本の作り手として一目置かれていることは百も承知だ。
『からすのパンやさん』『どろぼうがっこう』も、「加古里子さく/え」と聞いただけで面白いにきまっているとわかる。
そこで私はいつもハテナ「加古さんの本当の正体はどうなの?」と知りたくなるのだが。
もう数十年前になるが、保育と絵本関連のセミナーで加古さんと同席した際、大柄で堂々とした静かな紳士は、全く偉ぶらないどころか控え目すぎる位で「僕はフェミニストです」と、にっこりした。ハテナ「加古さん、とぼけたふりがお上手!」と私は睨んだ。
実はずっと昔、都立高等保母学院生だった十九歳の私が、上級生に誘われて川崎セツルメントに胸躍らせてお供した時お会いした加古さんとは、まるで別人のようなので驚いてハテナ
戦後はまだ終らない一九五〇年代である。
シカゴにセツルメントのハルハウスを創設した社会事業家、婦人国際平和自由連盟総裁にしてノーベル平和賞を受賞した「ジェーン・アダムス」の生涯を村岡花子訳で読み、感銘を受けた私は自分の仕事に児童福祉の道を選んだ。それでもう喜び勇んで川崎へお供した。
しかし、憧れのシカゴのハルハウスとは建物からして全く違うのだ。東京、川崎、どこにでもあるごく普通の民家に、育ち盛りの五、六年生位の男の子が大勢集まって絵を描いていたのだが、叫び、どなり、押しあい、ぶつかりあい、騒々しくて家が破裂しそう。
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