彼らの秘密を探りたいなら、方法は一つ、絵本を読んであげる、これしかないでしょう。私は今、猛烈な後悔に襲われています。息子が小さかった時、どうしてもっとその時間をじっくり楽しまなかったのか。大事な秘密を共有できる絶好の機会だったのに、早く寝てくれないと、原稿が間に合わないなあ……という、つまらない焦りにとらわれていました。自分の原稿など放り出してお話の国を一緒に冒険すべきでした。息子の息遣いに耳を澄ましていれば、道順のヒントをかぎ取ることができたかもしれません。
ただし一方で、子どもが持つ慎重さについても中川さんは指摘しておられます。すべての本に彼らが満足するわけではなく、また、それを受け入れるには、一人一人異なった過程があります。
“新しい本には、ためつすがめつの時間も必要です”
私はこの、ためつすがめつ、という言葉が気に入りました。表紙を開き、絵を見やり、一度顔を上げて宙に視線を泳がせる、子どもの横顔が想像できます。迷いとためらいが、利発そうな影を作り出しています。そこでは、時間がその子だけの流れ方をしています。誰も邪魔できない特別な時間です。
だからこそ子どもが手に取る本は、本物でなければいけません。大人が勝手に要約したり、単純化したり、派手な見た目で誤魔化そうとしたものは、結局、見捨てられるでしょう。子どもたちは皆、賢いのですから。
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