書評

日本のハードボイルド史上、こんなにカッコいい女性主人公はいない!

文: 内藤麻里子 (毎日新聞社編集委員)

『魔女の封印』(大沢在昌 著)

『魔女の封印』(大沢在昌 著)

「魔女」シリーズは女性のリアリティーだけでなく、そんな大沢さんによる人間観察、社会観察がふんだんに入っている点も魅力だ。

 水原の男性分析は面白く、さまざまな男の見本市を見る思いがする。大沢さんは誰かモデルを思い浮かべているのだろうか。

 男女論もある。〈女は金で買えるサービスが好きだ。食事の内容よりもレストランの雰囲気を優先したり、何人ものエステティシャンに奉仕されるのに歓びを感じるのは、……それをうけられる自分の立場に酔う楽しみがあるからだ〉〈男は、女を楽しませることによってしか楽しめない。楽しませた女たちが、その夜ベッドルームで、どれだけの返礼をしてくれるかだけを期待してやってくるのだ。/男は損な生きものだ。だが損をしていると感じないのが、たぶん男の才能なのだろう〉(『魔女の笑窪』)

〈ビジネスの元手もなく、コネももたない人間が始められる金儲けが犯罪なの〉(『魔女の封印』)などと社会の流れを切り取ってみせてもくれる。

 何となく感じていたり、まったく気づかなかった人間や社会の様相が言葉できっちり説明される快感がある。現実社会を緻密に映し出した物語世界の上で、地獄島をはじめとした大胆な設定も自由に異彩を放つ。

 このシリーズはまた、一冊ごとにイメージも規模もぐんぐん変わっていく。

魔女の封印 上大沢在昌

定価:本体670円+税発売日:2018年12月04日

魔女の封印 下大沢在昌

定価:本体680円+税発売日:2018年12月04日

魔女の盟約大沢在昌

定価:本体900円+税発売日:2011年01月07日

魔女の笑窪大沢在昌

定価:本体700円+税発売日:2009年05月08日


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