インタビューほか

座談会「小沢昭一さんの正体」#3

加藤 武(俳優),矢野誠一(劇評家),三田 完

『あしたのこころだ』(三田 完 著)

『あしたのこころだ』(三田 完 著)

晩年の姿

 加藤 くしくも先日、桂米朝さんがお亡くなりになりましたが、米朝さんと最後にお目にかかった時にちょうど小沢も一緒で……。

 矢野 二〇一二年の八月ですね。「米朝一門夏祭り」の会に呼ばれたんですよ。

 加藤 米朝さん、小沢、大西や僕も、作家で落語や寄席の研究家でもある正岡容の弟子なんですよ。その縁もあって米朝祭りに招かれたんだけど、一門のトップである米朝さんは高座へは立てない状態だった。でも僕たちに会うと記憶が甦って元気になるので座談会をやりました。そのとき小沢もだいぶ弱っていました。

 矢野 句会にもあれから出てこなくなりました。小沢さんという人は、仕事では色んな顔を見せるけれども、やなぎ句会ではリラックスしているのか、裸の姿というか、あそこでしか出さない顔を見せるんですよ。大阪に一緒に行ったのは、他に大西信行さんと永六輔さんでしたね。

 加藤 あのおしゃべりの小沢が座談会ではあんまり話をしなかった。それが突如……。

 矢野 いきなり浪花節を披露したんですよね。

 加藤 “バカで間抜けでおっちょこちょい”って正岡容が作った『灰神楽の三太郎』を。ただ、いきなりだったから、みんなびっくりしちゃった。

 矢野 正岡さんの話や何かをしていると、米朝さんの頭の回路がつながるんですよ。あのときは、こんなことがあった、とかって。

 加藤 同時に小沢の回路もつながっていた。

 矢野 小沢さんも、もう米朝祭りに行く前から、句会に来ても、ちゃんと成績はいいんだけども、ほとんどしゃべらなかった。

 加藤 かなり弱っていました。行きの新幹線の中でも、殆ど会話なし。新横浜を通過する際に、「あ、ここへアンチョコ(編集部注・解説や解答のついた教科書)買いに来たなあ」ってポツリとつぶやいた。

あしたのこころだ三田完

定価:本体700円+税発売日:2018年12月04日


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