インタビューほか

座談会「小沢昭一さんの正体」#3

加藤 武(俳優),矢野誠一(劇評家),三田 完

『あしたのこころだ』(三田 完 著)

『あしたのこころだ』(三田 完 著)

 矢野 そうでしたね……。

 加藤 こっちも、大変だと思うから、黙ってました。あれは悲しかった。さあ、米朝さんも小沢も先に逝ってしまった……。

 矢野 小沢さんはかねてから、辞世の句は「あと三日生きて香典調べたし」だって、おっしゃってたのはご存知ですか?

 加藤 たしかに昔から葬式の話は好きだった。先に死んだら残った方が弔辞を読もうとか、葬式の段取りまで決めました。例えば愛人が来たら、本妻に内緒でお骨を少しもたせてやるとかそんな細かいことまでもね(笑)。

 三田 巧いでしょうね。そういう捌きは(笑)。

 矢野 それがいざお亡くなりになったら「香典辞退」って。結局、なにが本音なのか分からない。

 加藤 香典どころか花輪も受け取らなかった。生きている中に決めていたに違いなかったんです。

 三田 お通夜とお葬式のとき、私はお手伝いとして参加したんですね。お通夜のお客様がおおかたお帰りになったあと、お清めの席でわれわれ手伝いの者たちも飲み食いをしたんですけど、お腹が空いていたから、ついパクパク食べちゃうんですよ。そうすると次から次へとお寿司が出てくる。通夜ぶるまいの寿司桶が空にならないようにと、小沢さんは生前、ご家族に伝えていたんじゃないでしょうか。すみません、意地の汚い話で(笑)。

 加藤 生きてるときはもちろん、死んだあとも見事なやつでした。舞台と同じで大詰めで「肩すかし」を喰わされました。……今日はたっぷり小沢の思い出話ができてよかったです。

(オール讀物二〇一五年五月号掲載)

あしたのこころだ三田完

定価:本体700円+税発売日:2018年12月04日


 こちらもおすすめ
インタビューほか座談会「小沢昭一さんの正体」#1(2019.01.24)
インタビューほか座談会「小沢昭一さんの正体」#2(2019.01.25)
書評解説――満洲、そして匂いたつ言葉たち(2014.05.07)
書評三麗花の肖像(2011.04.20)