書評

ラテンアメリカとキューバ革命の壮大な叙事詩に仕掛けられた華麗なトリック

文: 八木啓代 (音楽家、作家)

『ゲバラ漂流 ポーラースター 2』(海堂 尊 著)

『ゲバラ漂流 ポーラースター 2』(海堂 尊 著)

 その日、キューバ音楽史に関するレクチャーを終えたところで、一人の男性が近寄ってきて、声をかけられた。

 それが、当時、このシリーズの執筆のために、キューバをはじめとするラテンアメリカに関する資料を渉猟しておられた海堂尊氏と私との出会いだった。奇しくも、そのまさに同時刻、巨星フィデル・カストロの訃報が世界を駆け巡っていた。

 

 ラテンアメリカを一言で表現すると、陽気。サッカーや音楽や踊りが盛んという印象が強い一方、政情不安定で、やたらに政変が起こっているというイメージがある。

 そのどちらも、あながち嘘ではない。

 特に、後者のイメージが決定的に形作られたのは、二〇世紀前半から中盤の南米だった。

 長年のスペイン王国の植民地支配から、ようやく、次々に一九世紀に独立を達成したものの、些細な利害の対立から国々は細かく割れ、さらに、それらの国々でクーデターや革命が次々に起こって、目まぐるしく政権が交代した。しかも、巨大帝国として新たに出現したアメリカ合衆国の利権に加えて、ソ連や中国といった共産主義国家の台頭という巨大な波に揺られ、二〇世紀のラテンアメリカの国々は、右も左も魑魅魍魎が徘徊する百鬼夜行の舞台となる。

ゲバラ漂流海堂 尊

定価:本体870円+税発売日:2019年03月08日

ゲバラ覚醒海堂 尊

定価:本体800円+税発売日:2019年02月08日


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