「夜になったら星を眺めてね。ぼくの星はとても小さいから、どこにあるか教えてあげるわけにはいかない。だけどそのほうがいい。ぼくの星は……星のうちのどれか一つだということだから。それできみは星全部を眺めるのが好きになる。星がみんな友だちになるよ。それから、ぼく、きみに贈り物を一つあげる……」
「きみが夜、空を見上げると、あの星の中の一つにぼくが住んでるんだから、その星の中の一つでぼくが笑ってるんだから、きみにとっては全部の星が笑っているようなものだ。きみは笑ったりすることができる星を持つことになるんだよ」
これらは私がもっとも好きな王子さまの言葉だ。
生きていれば、愛する者との別れは避けられない。けれど、王子さまの言葉が、その悲しみを、どれだけ癒してくれることか。
もしも無人島に一冊だけ本を持っていくとしたら、私は迷わず『星の王子さま』をリュックに入れようと決めている。王子さまが自分の小さな星から何度も夕日が沈むのを眺めたように、私も何回だって、繰り返し繰り返し、本のページをめくることができる。そしてその都度、新しい発見をするだろう。『星の王子さま』は、おいしい水のように、心を潤してくれる存在だから。水なら、どんなに飲んでも飽きることがない。
この本の訳を手がけた倉橋由美子さんは、本の完成を待たずに急逝されたという。物語の作者であるサン=テグジュペリもまた、もうこの世にはいない。でも、体は存在しないが、確かに、いる。星の王子さまも、実際はいないのかもしれないけれど、確かに、いる。
大切なものは目に見えない、というのは、きっとそういうことなのだろう。
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作家・倉橋由美子が全力を尽くして翻訳した最後の作品
2019.06.04書評
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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