全7編を書き終えてみて、猫を飼いたいとは思わなかったのか尋ねてみると……。
「持論ですが、動物を飼ったら最後まで看取るのが飼い主の責任だと思っていて。作中にも出てきますが、里親を募集する『譲渡会』も会によっては、60歳以上は入れないところもあるんです。だからもういいかなと思っています。もちろん、ある朝ドアを開けたら猫が待っている、とか特別な出会いがあれば別ですけどね(笑)」
作家生活36年、近年は小説との向き合い方が変わってきたという。
「2017年に『淳子のてっぺん』を書いたときから、小説の書き方を変えたんです。これから何作も書けるわけではないと思うので、“これが最後の小説だ”という気持ちで徹底的に向き合っています。語尾をどうするかで一日悩むこともあります。若いころは、いくつも締切が重なると、“売れっ子”気分といいますか、たくさんの原稿をさばいていくことが嬉しかったこともありました。あの頃のように、がむしゃらに書く時期も必要だったと思いますが、もういいかなと。私ではなく、若い作家がどんどん書いてくれればいいと思っています。書き方を変えてから最初の数か月は『今日は3行しか書かなかった……』とか罪悪感にかられていたりもしたのですが、もうすっかり慣れました(笑)。これからも丁寧に、楽しんで書いていきたいですね」
ゆいかわけい 石川県生まれ。84年「海色の午後」でコバルト・ノベル大賞を受賞しデビュー。2002年『肩ごしの恋人』で直木賞、08年『愛に似たもの』で柴田錬三郎賞を受賞。
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