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<唯川恵インタビュー>新連載の舞台は出身地・金沢。花柳界の濃密な人間ドラマに挑む!

<唯川恵インタビュー>新連載の舞台は出身地・金沢。花柳界の濃密な人間ドラマに挑む!

「オール讀物」編集部

新連載インタビュー

出典 : #オール讀物
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

──私は身体の芯まで芸妓なんや。なんせ七歳の時からずっと東の廓で生きて来たんやから。

 現在発売中の「オール讀物」1月号より始まった、唯川恵さんの新連載「梅ふくへおいでませ」は、昭和初期の金沢・東の廓を舞台にした、芸妓たちの成長物語だ。

 主人公は20歳を目前に控えた置屋「梅ふく」の芸妓・朱鷺。

 芸妓として、女性として、ときに悩み苦しみながら激動の時代をたくましく駆け抜けていく。

 金沢出身の唯川さんにとって、東の廓(ひがし茶屋街)は身近な存在だった。

「小学校の同級生が住んでいましたし、知り合いに置屋を経営している人もいました。小さい頃は『近づいちゃだめ』と言われていた場所も多く、表玄関がない家もありましたね。今でこそ、ひがし茶屋街は観光名所として賑わっていますが、当時はそんな雰囲気は一切なかった。若い子たちが楽しそうに歩いている姿を見ると、『歴史を知らない人も多いのかもしれない』と複雑な気持ちになることがあります。だからこそ、金沢の人間として、この土地の物語を書いてみようと思いました」

 金沢に遊廓が誕生したのは江戸時代。加賀藩主が浅野川、犀川のほとりに茶屋町を設けたのがはじまりと言われている。西廓、東廓、主計町(かずえまち)はとりわけ栄えており、日露戦争の前後にはロシア兵も多く訪れた。

 売春防止法が施行された昭和32年までは、いわゆる“赤線”が公認されていた時代。

 東廓は、何百人もの芸妓を抱えていた時期もあり、比較的学識の高い芸妓が揃っていたようだが、女性が芸一本で生きていくのはまだまだ困難だった。

 主人公・朱鷺のように、幼いころ置屋に売られ、「水揚げ」を経て一人前になる芸妓も多く存在していた。

「金沢は、歴史を辿れば女の涙が深く沁み込んでいるような土地なんです。でも、当時の置屋の女性たちはものすごくたくましくて、自立していたはず。働く女性の原点がここにはあると思います」

「オール讀物 1月号」(文藝春秋 編)

「梅ふく」には、年齢も生い立ちも違う個性豊かな芸妓たちが集う。

 例えば、朱鷺の幼馴染・トンボは芸妓でありながら、いつも男仕立ての着物を纏い、髪も結っていない変わり者だ。

「実際にトンボのような子はいなかったと思いますが、これはあくまでもエンタテインメント小説。史実を飛び越えて、面白い人間模様を描いていきたいです。芸妓の商売相手は男ですが、置屋のなかは女社会。私の大好物です(笑) 。喧嘩や嫉妬もありますが、『ひとりで頑張らなくちゃならない』という思いを共有した女性たちの間には、ある種の連帯感も生まれてくる。女性同士の関係性も楽しんで読んでほしいですね」

 豪華絢爛な着物、優雅な舞など花街文化特有の華やかな描写にも注目したい本作。

 花柳界の濃密な人間ドラマがどう展開されるか楽しみだ。

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