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作家・伊集院静の人生相談「悩むが花」から傑作10選一挙紹介! 『女と男の品格。』発売記念

作家・伊集院静の人生相談「悩むが花」から傑作10選一挙紹介! 『女と男の品格。』発売記念

文:「オール讀物」編集部

「女を舐めとると、命とられるよ」「哀しみにはいつか終りが来る」「女の方が、男よりエライ」


ジャンル : #随筆・エッセイ

 人間の裏も表も知り尽くした作家・伊集院静が身体をはって回答する、週刊文春の人気連載「悩むが花」。“笑えて、泣ける”言葉の処方箋を厳選した文庫『男と女の品格。』が発売されたのを機に、過去の悩み相談からとっておきの10本をショートバージョンでご紹介します。


Q 結婚直前に、婚約者がかつてフーゾクで働いていたことがわかりました。過去を隠していた彼女に不信感をもっています。婚約を解消すべきでしょうか。(29歳・男・会社員)

A バカも休み休み言いなさい。

 風俗で働いていたことが、そんなにおかしなことかね。むしろよく頑張ってたんだナ、と思ってやらんとイカンのじゃないのかね。

 それを不信感だと? 結婚はやめたほうが彼女のためだ。

 君は「隠してた」って言うが、君に好かれたい気持ちがあってのことだ。隠してた彼女の気持ちにもなってやれんのか。

 一人の女性を引き受けるってことは、過去のすべてを、いや彼女を取り巻くすべてのことを君が引き受けるってことだ。

 それもわからんのか。

 

悩みに答える伊集院氏

Q 何の気なしに夫の携帯を見たら、すごく疑わしいメールを見つけました。頻繁に会っている女性がいるようなのです。浮気を問いただすべきでしょうか。(42歳・女・パート)

 奥さん、何の気なしに誰かの携帯電話を見たらイカンでしょう。

 たとえご主人のものであっても、子供のものであっても勝手に見ちゃいかんよ。

 どんなしあわせな家庭の中でも、あのお祖母ちゃんが、あの父さんが……という“まさか”がうごめいているのが人間なんだ。

 まあ、のぞいたものはしょうがないわナ。

 奥さん、ご主人は断じて浮気はしていません。

 それだけ頻繁に会っているなら、それは本気です。

 

Q 東日本大震災で、最愛の家族を失いました。毎日がむなしく、生きる気力が湧いてきません。自分も家族のところへ行こうと思う日々です。(51歳・男・公務員)

 私も弟や妻を失くした経験があるから言わせてもらうけど、生き続けてさえいれば、これは時間が解決してくれる。“時間がクスリ”という言葉は本当だ。

 しかし、それもあなたが生き続けることが大前提なんだ。

 人の死は、その人と二度と逢えないだけで、それ以上でも以下でもない。必要以上に哀しまないことだ。

 君に今言えるのは、哀しみにはいつか終りが来る、ってことしかないな。

 耐えてくれ。耐えてやれ。

 そうじゃなきゃ、死んだ人までが不幸になる。

 

Q オジサン転がしがうまい同期は上司にかわいがられ、仕事をどんどんふってもらっています。まわりに媚びるのが大嫌いな私は、最近、仕事を干され気味。悔しくてしかたありません。(32歳・女・会社員)

 媚びるのが嫌いだって?

 そこは職場だろう? 給料もらってんだろう? 媚びろとは言わんが、上司、先輩を少しは敬って、好意を持って接するのは常識だろう。

 最近、仕事を干され気味?

 会社は正しいんじゃないか。君に協調性がないってことは、皆とっくにわかっとるんだよ。そういう人間に大事な仕事はまかせんでしょう。

 やめろ、会社。周囲が迷惑だ。

 

 読書が好きです。気に入った本があると繰り返して読む事が多いのですが、それよりもどんどん新しい本に手を出すほうがよいでしょうか。(14歳・男・中学生)

 読書を「言葉の海」にひとり小舟で乗り出すことだと表現した人がいる。

 中学生の君は、次から次に出版される新しい本をできる限り読もうなんてしてはダメだ。

 読書が辿り着くところは、君が、運命の一冊に出逢うことにあるんだ。

 素晴らしい読書は、それが小説であれ、伝記であれ、人生の中で何度も読み返すことができる一冊の良書に出逢うことにつきる。

 一冊の良書にめぐり逢うことは、人生において一人の友人に出逢うことと同じ価値がある。

「言葉の海」へ旅することが好きなら、君は必ず、その一冊に出逢うはずだ。

文春文庫
女と男の品格。
悩むが花
伊集院静

定価:693円(税込)発売日:2020年02月05日

単行本
女と男の絶妙な話。
伊集院静

定価:1,100円(税込)発売日:2019年05月13日

文春文庫
人生なんてわからぬことだらけで死んでしまう、それでいい。
悩むが花
伊集院静

定価:594円(税込)発売日:2017年04月07日

文春文庫
悩むが花
伊集院静

定価:539円(税込)発売日:2014年12月04日

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