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<小林泰三インタビュー>会社という不思議の国に迷い込んだアイドルの奮闘記

<小林泰三インタビュー>会社という不思議の国に迷い込んだアイドルの奮闘記

『代表取締役アイドル』(小林 泰三)


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『代表取締役アイドル』(小林 泰三)

イメージを覆す研究職の実情

 ささらのパートとともに、この会社の研究所のパートが語られていく。そこでの主人公は、入社5年目の研究員の塩原帆香。データ改ざんは当たり前、逆らった社員には陰湿ないじめが待っている状況に、彼女は疑問を抱いている。
 

「僕は、もともと工学部で会社員の間はずっと研究所勤務でしたが、最後の数年間は、会社が吸収合併されて、工場の品質管理部にいました。研究所のシーンは、そういう意味ではリアルなものですね。もちろん自分がいた部署ではデータ改ざんはありませんでしたが(笑)」
 

 研究所のシーンで特に印象的なのは、特許の話。上司が、「特許は金儲けに直結している。嘘はあかんけど、全てを曝け出す必要はないんや」と帆香にアドバイスをする。
 

「発明したら全部特許と思っている方が多いかもしれませんが、特許と企業秘密は表裏一体。どこまでを特許で申請するか、どこまでを企業秘密にするかという問題があります。

 全てを曝け出してしまうと、会社の技術などを守り切るのはむずかしいわけです。意図的に公表しないこともあるというのは、皆さん意外に思うでしょうね」
 

 企業の研究所である以上、利益を生むことが求められる。科学や研究は、利益や出世欲とは切り離されたところにある純粋なものという、ある種の科学信仰をもって見ていると、イメージは大きく覆される。

単行本
代表取締役アイドル
小林泰三

定価:1,870円(税込)発売日:2020年06月05日

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