「小説にも出てきますが、研究所に勤めている人たちにも様々なタイプがいて、純粋に実験が好きな人や科学的発明・発見をしたい人もいれば、出世したい人、とりあえず会社に認められる発明・発見をしようと思っている人もいる。社会は、様々な人がいて成り立っているので、それが悪いとは思いませんが、価値観が違う人たちが集まっているところには、どうしても軋轢は生まれます。
それに、多くの方々は、科学というのは答えが一つ、科学者同士の意見は一致するものだという科学信仰を持っているかもしれませんが、そんなことはない。
例えば、今、世界で問題になっているコロナウィルスに関しても、専門家が言うことはバラバラ。というのも、特に化学や生物学の分野は、わからないことだらけなわけです。
会社のデータ偽装が報道され、いよいよ危機に陥るシーンで、秘書の名言が炸裂する。
「利口な人間とは戦う必要すらありません。ただ、道理を説けばいいのです。しかし、権力を持った馬鹿に道理は通りません」
「あなたに馬鹿と戦う覚悟はありますか?」と問う秘書。
ダメ会社の危機をささらは救えるのか。それぞれの場所で奮闘していたささらと帆香にはどんな運命が待ち受けているのか。
笑いながら読んでいると、実は他人事ではない、本当はこわーい企業小説だ。
こばやし・やすみ
1962年京都府生まれ。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門、2012年『天獄と地国』で第43回星雲賞日本長編部門、14年『アリス殺し』で啓文堂大賞文芸書部門、17年『ウルトラマンF』で第48回星雲賞日本長編部門をそれぞれ受賞。
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『代表取締役アイドル』小林泰三――立ち読み
2017.10.19ためし読み
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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