その企業、レトロフューチュリア株式会社は、古い規格製品の隙間産業で儲けていたが、ある時、偶然この会社製の真空管を極低温に冷やすと、それが量子ゲートとして作用することが発見され、原理はわからないが、その真空管を使えば、今までより桁違いに安く、量子コンピュータが実現できると、この一点において、いっきに世界規模の大企業となった。
社外取締役となったささらがそこで目にしたのは、自分たちが正義であることを疑わない創業家のパワハラ親子と、彼らに「各部門から世界一をだすんや」と尻を叩かれても、「目標売上1兆円」という冗談のような目標を出されても、反論もしないイエスマンだらけの役員会だった。
「会社の中で、ある程度出世していくと、会社と共犯関係が生まれてくるので、あまり、出世しないほうがいいのかもしれませんね(笑)。
大会社なのに、どうしてそんな馬鹿なことをするんだ、というような事件がいくつも起こりますが、たぶん内部の人は、上司からやれ、と言われたから、やってしまっただけなのでしょう。一度大義名分が与えられると、自分の中で合理化してしまいますから」
そんなダメ会社にありながら、どの社員よりも会社の現状を冷静に分析している敏腕美人秘書の協力を得て、お飾りでなく、自分の頭で考えようとするささら。
「組織の常識はみんなが共有しているものなので、正しいことをしようと思うと、反論するのは、とてもむずかしい。
ささらは、アイドルといっても地下アイドルで、自分は選ばれた人間なのだろうかと疑問を持っているキャラクターです。自分が選ばれた人間であることを信じ切っている創業家とは正反対に位置します。
会社の在り方に率直に疑問を投げかけられるのは、彼女のようなタイプではないかと思いました」
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『代表取締役アイドル』小林泰三――立ち読み
2017.10.19ためし読み
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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