作家・梨木香歩さんによる文藝春秋誌2010年12月号の巻頭随筆を、10年もの時を隔ててウェブ上に掲載するのには、大きな理由がある。
この記事は、『ある小さなスズメの記録』(クレア・キップス著)の単行本が刊行された際に、訳者である梨木さんが本を紹介したものだ。本書はイギリスで第二次世界大戦の時代に生きた小スズメ・クラレンスの実話だが、コロナ禍に生きる私たちの心に寄り添い、励ましになるのではないか、と思われたからである。「生き続けるということ」について、クラレンスは背中で示してくれる。
戦争中、ロンドンの人々はクラレンスに慰められたという。また半世紀以上の時空を飛び越えて、今まさに現在進行形で生きる私たちの背中をも、そっと優しく押してくれるだろう。クラレンスにおおいに魅了されたという梨木さんの名エッセイをぜひお読みください。