全国のミステリーファンのみなさま、こんにちは!
先月よりスタートした「文春ミステリーチャンネル」は、文藝春秋が毎月刊行している書籍、雑誌のなかから「ミステリー(推理小説)」に特化した新作情報を発信していきます。あまりミステリーのイメージがない出版社かもしれませんが、実はけっこうコアな謎解き作品も出してるんですよ。
第2回となる今回は、2020年7月分を一挙ご紹介します。毎月22日頃に月イチ更新しますので、どうか読み逃しがありませんように、チェックリストとして活用してください!
【文春文庫】
□『ランニング・ワイルド』堂場瞬一
□『ドローン探偵と世界の終わりの館』早坂吝
□『満月珈琲店の星詠み』望月麻衣(画・桜田千尋)
□『心では重すぎる』上下 大沢在昌
まずは文春文庫から4点。警察組織とスポーツ、両分野に精通した堂場さんにしか書けない傑作が『ランニング・ワイルド』です。主人公の和倉は警視庁の機動隊員であると同時に、過酷な「アドベンチャーレース」に参加する警視庁チームのキャプテンでもあります。そんな和倉に、レース直前、「家族を預かった。返してほしければレース中にあるブツを回収しろ」という電話がかかってきます。和倉の妻、2歳の娘がともに誘拐され、人質にとられているというのです。どうです、面白そうでしょう? キャプテンとしてレースに臨む和倉は、チーム仲間にも事件を秘し、難関レースをクリアしながら、犯人の要求に応え、事件の真相に迫らねばならないのです。
前代未聞の“タイトル当て”ミステリー『○○○○○○○○殺人事件』(第50回メフィスト賞)でファンの度肝をぬいた早坂さん。『ドローン探偵と世界の終わりの館』では、同書に勝るとも劣らぬ大サプライズが読者を待ち受けます。ドローンを自らの目として、手足として、自在に操る青年・飛鷹が本書の主人公。彼ら大学探検部一行が、谷間の村に建設された奇妙な館を訪れるのですが、嵐で外部との連絡が絶たれる中、お約束のように連続殺人が発生します。巻頭に掲げられた「読者への挑戦状」の意気やよし。「想像の翼が羽ばたけば無限のトリックが生まれる。騙されたくなければ、あなたも飛ぶしかない」との作者の言葉に、大いに発奮して真相を推理しようではありませんか!
喫茶店メニューを描いたカラー口絵が美しい『満月珈琲店の星詠み』。“満月の夜にだけ現れる珈琲店” “三毛猫のマスターが星占いをする”という設定だけ聞くと、「本当にミステリー?」と思われるかもしれません。しかし! スランプ中のシナリオライター、不倫未遂のディレクター、恋するIT起業家――一見バラバラに見える珈琲店のお客さんにはある共通点が……。彼らが店を訪れた理由が明かされるとき、読者の心は温かな気持ちで満たされます。こういう形の驚きもあるのか、としみじみ感じさせられるミステリーなのです。
『心では重すぎる』は、大沢在昌さんのデビュー作『感傷の街角』以来、40年以上にわたって書き続けられている「私立探偵・佐久間公シリーズ」最新作の文庫新装版。失踪した人気マンガ家の行方を追う私立探偵の前に、謎の女子高生が立ちはだかります。渋谷の街を舞台に、違法薬物、マンガ業界の内実、自己啓発セミナーと、現代の「闇」が次々に浮かび上がっていく展開は圧巻のひと言。2000年に単行本が出た本書がシリーズ最終作かと思われていたところ、なんと「小説現代」2020年3月号に20年ぶりに新作(「無辺の夜に生きる」)が掲載! いまあらためて読まれるべき名作です。
【オール讀物】
□「復讐の女神」中山七里
□「ミモザ」芦沢央
□「隣の芝生が枯れたとき」赤川次郎
□「P活地獄篇〈前編〉」石田衣良
先月につづき、今月もミステリー作品が充実している「オール讀物」8月号。デビュー10周年を迎え、怒濤の12ヶ月連続新刊刊行中の中山七里さん「復讐の女神」は、元高裁判事の高遠寺静と名古屋の不動産会社社長・香月玄太郎とがコンビを組む人気シリーズ最新作。静がかつてともに働いた裁判官たちが次々謎の死を遂げていく展開に驚かされます。事件の背後に存在する強烈な「悪意」の正体とは? 著者渾身の本格ミステリー110枚です。
先月の「お蔵入り」に続いて2ヶ月連続の寄稿となる芦沢央さんの「ミモザ」は、料理研究家の女性主人公が、サイン会場で9年前に別れた元不倫相手に出会うところから始まります。この男は、いったいなぜ、何の目的で私の前に姿を現したのか? 揺れる心をおさえつつ主人公は男に会いに行ってしまうのですが――。その後の急展開、究極のスリル、深い余韻を残す読後感は、読んでのお楽しみです。
赤川次郎さん「隣の芝生が枯れたとき」は、こちらもデビュー以来43年にわたり書き続けられている「幽霊シリーズ」の最新作。女子大生の恋人・夕子とデート中の宇野警部のもとに「女の他殺死体が見つかった」との一報が入ります。事件の背後には、どうやら奥さんどうしのトラブルがあるようで――。傑作シリーズの新作を、いち早く雑誌でチェックしてみませんか?
石田衣良さん「P活地獄篇」は、おなじみ「IWGPシリーズ」最新作。みなさんは「P活」=「パパ活」(女性が経済的に余裕のある年上男性と時間を過ごし、対価として金銭を得る活動)の実態をご存じでしょうか? 新型コロナ下の「パパ活」をめぐる最前線と、その暗部が克明に暴かれていきます。我らがマコトの活躍に注目!
以上8作、駆け足でご紹介しました。
ミステリーは私たちの大切な友人です。本欄では、毎月、ミステリーの「いま」を感じられる作品をどんどんご紹介していきます! 乞うご期待!
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