- 2020.08.21
- コラム・エッセイ
【8月の注目】「させていただきます」はNG?──『段取り上手のメール──さくさく仕事が進む超速文章術』
文藝春秋出版局
担当編集者の一押しコメント!
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#趣味・実用
中川路亜紀著『段取り上手のメール――さくさく仕事が進む超速文章術』が8月6日に発売された。なぜ仕事が速い人のメールは「短く、気持ちがいい」のか、謝罪や感謝、依頼メールの文例フレーズ集や、誰も教えてくれない新時代のチャットマナーなど、書くときの「気にしすぎ」がなくなること請け合いの一冊だ。
この記事では、論争が絶えない「させていただきます」について。
「させていただきます」は使用してもいい
「送らせていただきます」などの表現を敬語の間違いとする見解がありますが、実はその見解が間違いです。
2007年の文化庁の「敬語の指針」は、「動詞+(さ)せていただきます」という表現について、次のような場合は正しいとしています。
(1)相手方や第三者の許可を受けて行うようなこと
(例)貴会のレポートを引用させていただきました
(2)そのことで自分が恩恵を受けるという事実や気持ちがある場合
(例)展示会のご案内を送らせていただきました
業務の必要性があって書類を送る場合は「お送りいたします」でよいということです。
ただし、(2)は境目が微妙なところがあります。
たとえば、請求書を送る場合はどうでしょうか。自社への入金を求める書類を送るのですから、(2)のようにも見えます。とすれば「請求書を送らせていただきます」というのも必ずしも間違いとは言えません。
しかし、業務上送って当然のものについては「お送りいたします」という表現で十分と思われ、こちらのほうがすっきりした言葉づかいになります。
このあたりは、最終的には好みの問題になります。
関連して、「明日はお休みを取らせていただきます」を取引先に言うのは間違いという見解もあります。
なぜなら、お休みは自分の上司に申し出て取らせてもらうもので、取引先との対話で上司への敬語をつかっているのはおかしいというのです。これも一面的すぎます。
少し深い話になりますが、仏教には「おかげさまで生かされている」と周囲に感謝することを説く教えがあります。「お休みを取らせていただきます」は、「取引先などのご協力があって、おかげさまで休みが取れます」という意味がこめられているのです。
このようなことに安易に正誤を言うべきではないと思います。なお、「送らさせていただきました」は、明らかな文法上の間違い(五段活用の動詞には「させる」ではなく「せる」がつながる)です。