インタビューほか

プロ野球ファンたちの交錯する人生――いつの空にも星が出ていた(佐藤 多佳子)

「オール讀物」編集部

Book Talk/最新作を語る

プロ野球ファンたちの交錯する人生――いつの空にも星が出ていた(佐藤 多佳子)

プロ野球ファンたちへの愛をこめて

『いつの空にも星が出ていた』(佐藤 多佳子)

「大洋ホエールズのファンになったのは、遠藤(一彦)投手がきっかけで、大学時代はよく神宮球場のレフトスタンドへ応援にいきました」

 以来、球団名の変更や、三十八年ぶりの日本一、長い低迷期から初のCS進出などを経て、佐藤多佳子さんは四十年近く横浜ベイスターズのファン。「特に三浦大輔投手がFAで残留してからは、横浜スタジアムで応援をしなければと思うようになりました」と、足繁く球場に通い、春、秋のキャンプ見学にも出かけた。そんな熱い想いから生まれたのが、最新刊『いつの空にも星が出ていた』である。

「最初の『レフトスタンド』という作品は、小説雑誌の依頼を受けて、野球を見始めたばかりの若い頃の思い出をモチーフに書いたものです。ごく短い掌編だったにもかかわらず、反響があり、横浜という球団のいくつかの時期を絞って、それぞれの物語を描いていったら面白い単行本が作れるのではないかと思いました。そうすると優勝した一九九八年は絶対に外せないし、現在に比較的近い時代のものを一本、そして横浜といえば長く低迷していた時期は必須なので、どの時期を舞台にするかはすぐに決まったんですが……相変わらず書くのは遅くて(笑)」

 まず執筆にかかったのが「ストラックアウト」。チームの苦しい時期を扱うことで、逆に男同士の奇妙な友情をテーマにコミカルに描いてみようと考えた。次の「ダブルヘッダー」は、横浜が初めてCSに出場した二〇一六年を舞台にするはずが、一七年シーズンは、CSを勝ち抜いて日本シリーズ進出となり、二年間を描くことに。左投げの野球少年の視点で進む物語には、自ら観戦した実際の光景も投影されている。最後に書かれた「パレード」は、マシンガン打線や大魔神・佐々木主浩投手の活躍による優勝を目の当たりにする、十代の少年少女の恋愛ものであり、青春小説を多く手掛ける著者の本領が大いに発揮された中編だ。

「球場観戦する特別な日を楽しみに夢見つつ、いつも応援するチームを心に抱き、地道に日々を生きている、そんなファンの人たちを描きたかった。スタジアムの隣の席で応援しているような、実際に通路ですれちがっているような、名前を知らなくても親しく感じる人々。その人たちの人生が野球と交錯するところで生まれるドラマを追いかけてみました。各編それぞれ、恋愛、友情、家族など普遍的なテーマを扱っているので、ベイスターズ以外の野球ファン、野球に興味がない人にも、読んでいただけると嬉しいですね」


(「オール讀物」11月号より)


さとうたかこ 一九六二年東京生まれ。八九年「サマータイム」でデビュー。二〇〇七年『一瞬の風になれ』で吉川英治新人賞、本屋大賞。一七年『明るい夜に出かけて』で山本周五郎賞。


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