- 2020.12.28
- インタビュー・対談
「タイトルは麻雀の最中に決まりました」――黒川博行『騙る』インタビュー
聞き手:Voicy 文藝春秋channel
ジャンル :
#小説
,#エンタメ・ミステリ
金の匂いを嗅ぎつけ、古美術業界の掘り出し物にたかる人々――
黒川博行さん最新刊『騙る』は、古美術業界を舞台にした美術ミステリー傑作集。
刊行に際し、ご本人のインタビューをお届けします!
voicy「文藝春秋channel」の音声はコチラ→https://voicy.jp/channel/1101/113094
――最新刊『騙る』は、古美術のシリーズとしては『文福茶釜』『離れ折紙』に続く3作目です。今回も様々な美術作品が出てきますが、何を取り上げるのか、どのように決められているのですか。
今まで取り上げていない作品を、とは思っていますが、どういうふうに決めたのかは、ちょっとわからんですね。
――思いつくタイミングとかは……
だいたい寝てるとき、です。
――それは夢に出てくるとか、そういうことですか。
夢には出てきません。寝て起きたときに、頭が冴えている時間帯があるんですね。
そのときにふっと降りてくるんですね。
これは使えそうやなと思ったら、立って、机のところに行って、今思いついたことを忘れないように書きます。
――そしたら、思いつくまではひたすら待って……
いや、ひたすら待ってません。なんとなくふっと出てくるものなので。
日頃からある程度、何かを頭で考えてるから、出てくるんですけどね。
――取り上げる作品を決めたら、その描写をしなければならないと思うのですが、取材とか調べ物はどんなふうにされているんでしょうか。
編集者に協力してもらって資料をもらったり。その資料だけでは足らん場合は、ツテを辿って詳しい人に取材に行くんですね。
今回は鋳造屋に行ったのと、二条城の模写室にいきましたね。
二条城の模写室長は昔からの知り合いなので。
――小説を読むと、「現実でも、古美術の世界ではこんなに騙し合いが多いのか?」というのがすごく気になると思うんですけど、黒川さんの視点から見たときに、古美術の世界ってどんな世界ですか。
どうなんでしょうねえ。この小説ほど、ひどい騙し合いはないと思いますけど。でも書いてることの大半は本当のことですよ。
――何か現実のご存知のネタやエピソードがあって、それをかなり脚色してみたいな感じですか。
それもありますし、完璧な嘘もあります。
――最初の古美術にまつわる小説『文福茶釜』は1999年刊行、約20年前に出されています。当時と比べて、書き方や物語の構築の仕方など変わった点はありますか。
自分でいうのもおかしいけど、物語の構築の仕方は上手くなっていると思います。物語の展開、こんがらがり具合、その辺が昔はストレートだったんですけど、最近はだいぶよう考えてますね。物語の構成そのものが複雑になってますわ。
――もしかしたらさらに20年後はもっと複雑になっているかもしれないですね。
20年後は死んでますわ、間違いなく(笑)。
――『騙る』(かたる)というタイトル、インパクトがすごいですよね。
「謀る」(たばかる)とかもありました。『騙る』は仲間と麻雀してるときに思いつきました。
――寝ているときや麻雀のときなど、思いつかれるタイミングが面白いですね。
ええ加減なんです、人間が。
――表紙がとても綺麗ですね。奥様が描かれたとか……
舞妓ちゃんね。奥さんが描いた絵です。引退した実在の舞妓さんがモデルです。『離れ折紙』の表紙が太夫だったので、今回は綺麗な舞妓にしたいなと思っていました。色もこだわりました。デザイン事務所まで僕が行って、色指定もして、特色を使ってもらいました。表紙はすごい気に入っています。帯の色もピンクにしてくれと言ってね。この表紙は綺麗です。書店で目立つと思う。
――最後に読者の方に何か、お伝えしたいことはありますか。
是非お願いします! 面白い……と思います。
古美術、美術を書いた小説は少ないので、面白いと思います。