- 2021.01.20
- インタビュー・対談
直木賞作家石田衣良が国際ニュースについて、東大教授の藤原帰一に直球質問!
藤原 帰一 ,石田 衣良
『世界一ポップな国際ニュースの授業』(藤原 帰一、石田 衣良)
石田 藤原さんとは、あるテレビ局の番組審議会でご一緒していて、みんなでお弁当をたべているとき、今回のきっかけになる話題が出たんですよね。最近、テレビを見ていても世界のニュースが少なくなったし、今の若い子は海外の翻訳小説も読まなくなって、世界に関心を持たなくなってますよって。
藤原 そうでしたね。それで石田さんが、たとえば映画『アベンジャーズ』一本を見るくらいの気持ちで、手軽に読める本を作れないでしょうか、とおっしゃった。それで私が思わず、それはぜひ作ったらいいですねとポロリと言ってしまった(笑)。
石田 世界の今のカタチが二時間でわかる初心者向けの本ですから、優秀なガイド役が必要です。若い人がフェイクニュースと闘う力にもなる。もちろん、うってつけの専門家が目の前にいたから、水を向けたんですけどね。
藤原 うれしかったです。それに、国際情勢に興味を持ちはじめた高校生でも読める本は、意外と少ない。大学に入学する前に、これだけ読んでおけば、後は自分で学ぶことのできる基礎となる新書を作る意味が十分にあると思いました。
石田 他社の本ですが、日本人は世界のニュースを全然知らないというような新書が結構ヒットしていますけど、国際ニュースって、基礎となる歴史的背景を知らないと、本当に退屈なものです。ヨーロッパの人々が中東情勢を日常的に気にしているのは、難民の状況が自分の生活に影響するからだし、歴史的にもずいぶんと介入してきたからです。そうした背景を少しでも知っていれば、日本人も国際ニュースにもっと驚きや恐怖、それにおもしろさを感じるはずです。
藤原 あまりにも堅苦しい感じになるのは、こちらも遠慮したいので、石田さんから直球の質問をぶつけていただければ有り難いです。私は大好きな映画を見る合間に国際政治を勉強していると公言しているので、その地域の映画についてもご紹介したいと思います。
石田 藤原さんが映画を語るときは、本当に映画への愛が溢れてのびのびしていて、それと同じ口調と和やかなテンションで国際政治を語ってもらいたいなあ。
藤原 映画についてしゃべるときはニタニタしていて、国際政治のときはお葬式みたいな顔をしてるって、よく言われるんですけどね。
石田 前者でお願いします(笑)。
この対談は新型コロナが中国からヨーロッパに蔓延しはじめた頃にスタートしたわけですが、まさかこんなに世界的なパンデミックになるとは予想もできませんでした。
藤原 ヨーロッパに続いて、アメリカが脆弱な姿を晒すとは、まったく予想外でした。それで、日本で新型コロナの流行が少し収束しかけたころに、これからのコロナ後の世界がどうなるのか、語り合うことにしましたね。
石田 このパンデミックが改めて世界に目を向ける機会になったと思います。世界中が一つの危機に立ち向かうなんて、滅多にないことですから。
それでは、ぼちぼち始めましょうか。
(「対談の前に」より)
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