人気漫画家・久世番子氏が部長をつとめる故(ふる)きをたずね、新しきをテキトーに知ったかぶる「よちよち文藝部」。
東西の「名作」に若き担当編集者らと挑んだ爆笑コミックエッセイがついに文庫になりました。
いまや全国の中高生必読書との噂……。
文庫化記念として三人での思い出鼎談をご披露します!
番子部長の妄想炸裂! 日本文学篇
担当女史 この度、日本文学篇と世界文学編が一緒になった「よちよち文藝部」が発売に! なんてお得なのでしょうか。
番子部長 これ一冊で日本も世界も知ったかぶれます。
担当女史 日本文学篇は番子部長の妄想炸裂極まりないですね! ノーベル文学賞をとった川端のあの作品を、注釈の「*」から「エロ」を切り口に読み解くという……。
番子部長 全ての深読みはエロに至ります。
担当女史 どの章を読んでもこみ上げる笑いを抑えられないのですが、特に「桃から生まれた?」の回、何度読んでも……たまりません。ぷぷぷ。
番子部長 尾崎紅葉や芥川の「桃太郎」が存在する一方で、太宰は「お伽草子」の中であえて「桃太郎」は書かなかったので、そこを私なりに掘り下げて……。
担当女史 太宰から漱石から三島から中島敦から…番子部長の妄想「桃太郎」が!
番子部長 作家の数だけ「桃」があるんですね~。「教訓はなんにも含まれて居りませんから、皆さんは安心して読んで下さい。」
担当女史 そんなものでいいんですね……よちよち文藝部……。そして、世界文学篇は長い道のりだったようで……。お、担当氏も現れました。
カタカナ名前が苦手な番子部長
番子部長 私はカタカナ名前が覚えられないのに、当時の担当女史たちに乗せられて、気がついたら世界文學篇をやることになっていたから、人生ってわからないものです。
担当氏 ホント最初はどうなることかと思いましたよ。岩波文庫の『モンテ・クリスト伯』を読むのが辛いからって、児童版の『がんくつ王』を手に取ってましたね。
番子部長 あらすじを知らないと読み切れる気がしなかったから、児童版から始めさせてもらいました。
担当氏 番子部長のカタカナ名前アレルギーはひどかった。でも海外ドラマを観るの好きですよね?
番子部長 そう、海外文学は読めなくても海外ドラマは好きという。
担当氏 打ち合わせが行き詰ると『ゲーム・オブ・スローンズ』とか『ザ・ボーイズ』の話をして現実逃避してましたね。『罪と罰』を読破して、自信がついたって番子部長は言ってましたよね。
番子部長 『罪と罰』ってタイトルからして敬遠してましたが、読んでみるとこれが結構エンタメでとにかく“引き”が上手い。カタカナ名前弱者の私も、これなら他の長い小説も読めるんじゃないかって希望を見出しました。
担当氏、愛を叫ぶ
担当氏 他に面白かったものってありました?
番子部長 『風と共に去りぬ』は面白かった! 何となくあらすじは知ってるから、どうせメロドラマなんでしょって甘く見てたけど、参りましたって感じ。映画は原作を読んでからみたけど、タイトルの「G」の文字が出ただけで涙腺崩壊する体になりました。担当氏のこともナメてたけど、意外と熱いことがわかったし!
担当氏 僕のことナメてたんですか……ぶ、部長。この作品はよちよち文藝部に入らなかったら、僕もたぶん一生読まなかったと思います。マーガレット・ミッチェルにナメてたことを謝りたいです!
番子部長 担当氏は元妻の前で『風と共に去りぬ』の一節を朗読したそうで。
担当氏 アシュレーにフラれるスカーレットの場面で、「スカーレット、これ以上傷つかないで!」という思いが溢れちゃって。元妻、いつも黙って本を読んでる人がどうしちゃったんだろうって、ポカンとしてましたけどね。
番子部長 元妻……。ってことは今妻にこの文庫を紹介するのは難しそうな。それにしても感情の起伏の少なそうな担当氏をこれだけ興奮させるとは『風と共に去りぬ』は名作ですね。
担当氏 今妻にも、今度朗読します! あとは……世界文學を読んで印象的だったことってあります?
番子部長 有名なシーンが意外と淡泊でしたねえ。
担当氏 例えばどんな?
番子部長 『ハムレット』の“to be or not to be”とか『ドン・キホーテ』が風車に立ち向かうシーンとか。
担当氏 全然盛り上がらないうちに通りすぎますよね。
番子部長 そうそう、東京駅の銀の鈴を見た時、あんなに有名なのに意外と隅っこの地味なところにあるのねって思ったのに似てる。
担当氏 あいかわらず番子部長のたとえがまた…。日本の近代文学も世界文学も制覇した番子部長の次なる山は…。
番子部長 ……次なる山ですと??
担当女史 番子部長なら、やはりここは古典ではないでしょうか!
番子部長 ……それはまた次回に続く!
担当氏 「引っ張れ罪と罰」じゃないんですから!
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