「言葉が届いた瞬間」「普段は抑えてしまう本への熱量をそのまま……」――第9回高校生直木賞 参加生徒の声(2)

高校生直木賞

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「言葉が届いた瞬間」「普段は抑えてしまう本への熱量をそのまま……」――第9回高校生直木賞 参加生徒の声(2)

2022年5月22日、第9回高校生直木賞の本選考会が開催されました。全国から過去最多となる38校が参加し、逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』を受賞作として決定。小説について熱く語り合った高校生たちの感想文を、3回にわけて掲載します。今回は品川女子学院高等部、 中央大学杉並高等学校ほか、9校をご紹介します。

渋谷教育学園渋谷中学高等学校(東京都)吉田光都希「言葉に真摯に向き合う」

 本に書かれている内容を吟味し、この本はこんな作品だ、作者はこれを描きたかったのではないか、この文はこんなことを暗示している、など全国から集まった高校生が一冊一冊を真剣に見つめた場だったと思う。また、自分の意見を言うにも、どう言葉にするかの考えが各々の中でよく練られているように感じた。実際、私は自分が言ったことが上手く伝わらなくて、もっと噛み砕いた表現に変えてチャットで意見を言うことも何度かあった。逆に、どう言葉にすればいいか行き詰ったとき、誰かがピタリとはまることを言ってくれて、それが言いたかった! となる瞬間もあった。しかし、意見を言葉にすることの難しさが、私のなかに一層強く印象付けられている。そして、その難しさを攻略して相手へ正しく意見が伝わるようにすることが、あんなにも熱量を必要とすることも初めて知った。

 おそらくあの場は、言葉に少し敏感な人たちの集まりだったと思う。その人たちと言葉や文、それによって織られる物語について語ることで私も今まで以上に作品を構成する全てのものへ意識を向けることができた。真に言葉に向き合うとは、そういう感覚だったのかもしれない。こんな機会は後にも先にもそうそうないだろう。

 大勢の人と6冊もの作品について議論を交わし、とても有意義な時間を過ごすことができた。このような機会を提供してくださった学校の先生方と高校生直木賞の関係者の皆様に感謝したい。

横須賀学院高等学校(神奈川県)棚橋奈那子「高校生が本を評価することの意義とは」

 本選会にて、高校生に勧められる本は何か、という話題が出たことがあった。「グロテスクな本は薦めるべきではない」という意見がある一方で、「グロテスクだという理由で高校生の可能性を狭めるべきではない」という意見もあった。私は後者に賛成である。

 私は選考会に参加する前、みんな意見はほとんど同じなのだろう、と予想していたが、参加してみて自分とは違う面白い意見をたくさん聞くことができた。全国の高校生37人が集まって、6つの物語を遠くから近くから、客観的に俯瞰的に読んで、考えを自分の言葉で説明する。それらは新たな発見であったり、自分と真逆の意見であったり、「高校生はこんなにも多様性に溢れていたのか」と気づかせてくれるもので、純粋に「楽しい」とも思った。

 評論家ではない高校生が本を評価することの意義は、そこにあるのではないだろうか。私が思うに、高校生は新たな未来を作れる存在である。自分の意見を持つことができて、かつ学問や仕事について専門性を持ちすぎていない、完全な主観で好きになることができる。そんな私たちが、歴史小説など今まで触れてこなかった様々なジャンルの本を読み、感想を共有して未来を創るための糸口を探すことができる。 それこそが、高校生直木賞に参加する面白さ、意義と言えるだろう。

向上高等学校(神奈川県)會澤さとみ「普段は抑えてしまう本への熱量をそのまま……」

 私は高校生直木賞を通じて、改めて読書に向き合うことの楽しさに気づくことができました。

 日常で友人や家族と読書に関する話をする機会はありますが、互いに自分の好きな本を薦め合うことが多く、同じ本について感想を伝え合うことはあまりありませんでした。高校生直木賞には本に対して愛情を持った同世代の高校生が参加していて、候補作のすべてに情熱を持って意見を述べていました。自分と同じかそれ以上の温度感を持つ高校生が集まった空間だったので、普段人に伝える時は、相手に合わせて抑えてしまう本への熱量をそのままに自分の意見を話すことができました。本選考会が終了した後、もっと話したかったと感じるほど、同じ本を共有して話すことは、私にとって刺激的な体験でした。

 1年生は観戦者として、2・3年生は本選考会の代表者として高校生直木賞に参加してきました。私は読書は1人で完結するものだと思っていたので、参加する前は本に関する意見を人と交わすことに抵抗がありました。しかし、色々な人の本の見方を聞いて、今まで意識していなかった、本を読むときに自分が大切にしていることに気づきました。読書は物語を楽しんだり新しい考えを知ったりするだけでなく、今まで知らなかった自分を見つけるものであると思います。3年間でたくさんの議論を通して、読書の持つ様々な面を知ることができました。これからも自分なりの本の読み方を見つけていきたいです。


■品川女子学院高等部(東京都)尊田優花「読書の世界が広がった」
■中央大学杉並高等学校(東京都)當間萌映子「“この作品が一番好き”という気持ち
■田園調布学園高等部(東京都)菅原さくら「濃密な時間」
■都立国立高等学校(東京都)内田りさ子「高校生直木賞を通して広がった視野」
■東京純心女子高等学校(東京都)松元すみれ「言葉が届いた瞬間」
■都立南多摩中等教育学校(東京都)舘山千晶「どのような視点から本を語るか」
■渋谷教育学園渋谷中学高等学校(東京都)吉田光都希「言葉に真摯に向き合う」
■横須賀学院高等学校(神奈川県)棚橋奈那子「高校生が本を評価することの意義とは」
■向上高等学校(神奈川県)會澤さとみ「普段は抑えてしまう本への熱量をそのまま……」


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