2020年から現在まで一体何が起きていたのか? 私たちの生活が“正常化”に向かっているように見えますが、これまでに何があったのか、本当に理解しているのか、心許なさを覚えます。
自らも内科医としてコロナ診療の現場を目の当たりにしている知念実希人さんの『機械仕掛けの太陽』は、人類と新型コロナウイルスの戦いを医療従事者の目から描きだしました。
いち早く読んだ書店員の方々よりの熱い感想をお届けします。
永嶋裕子さん(水嶋書房くずは駅店)
苦しい物語だった。これはもちろん小説だから、ドキュメンタリーではない。けれど、今もまだ終わりも見えず、未来も見えず、右往左往している私たちにとって、身近過ぎて苦しくなった。知念さんだからこそ書けた医療現場。
ニュースにはならないことが、この物語のように、きっとたくさん起きていたんだろう。それと同じように、私たちにもたくさんのことが起きていて、不安なまま判断したこともある。それぞれの立場のそれぞれの物語が、人の数だけあるんだ、と改めて思った。
みんなが初めての“機械仕掛けの太陽”に振り回され、人生が大きく方向転換したこの数年。小説の終わりに、ほんの少し明るい希望を描いてくれたことが何よりほっとした。
島田優紀さん(ブックセンタージャスト大田店)
読み始める前、タイトルの意味がとても謎で、機械仕掛け……??? となっていたけれど。読んでみて納得!!
まだ、コロナ禍から抜け出したとも言えず、発生から3年の現在でも色々と頭から消えていたことを思い出させる作品。年月日も入っているうえ、きちんとその日の実際の出来事と繋げていることで、小説でありながら記録にもなっていた。かなり感染者数が減ったように思える今の人数も、この頃大騒ぎな人数だと思うと、慣れは怖いと思う。
事実を織り混ぜながら、フィクションとはいえ架空なのは人物だけなのでは、この出来事はそれぞれ別の人ではあっても、事実起きたことだろうと思わずにはいられない。医療従事者のみなさんの戦いを目の当たりにしたよう。本当にありがとうございます。
富浦彩乃さん(未来屋書店各務原店)
この本を読むまで私はコロナ禍における医療従事者の方の生活の壮絶さを全くと言っていいほど知らなかったし、実際にお世話になることもなかったため、ありがたいなあとか、大変なんだろうなあという気持ちでいました。
しかし本を読んで今、医療に携わる方々は未知のウイルスとの戦争を最前線で戦ってくださって、自分の大切な家族との時間も何もかもを犠牲にしてまで私たち市民の生活を守ってくださったことをすごく実感しました。
普段知ることのできない医療の現場の様子をたくさん知ることができたし、実際に自分も同じ場にいるような緊張感が伝わってきて、少しでも医療従事者の方が大変なことも知っていけるようにしていきたいです。
近藤綾子さん(精文館書店豊明店)
心身ともに限界をむかえているにもかかわらず、新型コロナウイルスと戦い、患者を必死に助けようとしてくださる医療従事者の皆様。小説とはいえ、実際の現場にいて、体験され、発信し続けた知念先生だからこそ描ける小説だと強く思いました。
伊賀理江子さん(福岡金文堂志摩店)
医療の現場ではこんなことが起こっていたのか。私たちが未知のウイルスに怯え、我が子や年老いた親を守りたいとただただ消毒をし、マスクをして生活だけをしていた日々。こんな壮絶な光景がすぐそばにあったのか。「医療従事者の方々に感謝を」何度も目にし、耳にした言葉だけれど、この小説を読み終えてまた改めて思う。医療従事者の方々に心からの感謝を。
中目太郎さん(HMV&BOOKS OKINAWA)
医療の世界は非常に科学的であり、ウイルスもまた一定の働きを繰り返すものだ。しかし人間はそうではない。人間には意思があり、正しい事も間違った事もするし、敵にも味方にもなる。実際のパンデミックを舞台に描いた作品であり、年齢も性別も異なる人間ひとりひとりの物語であり、すべての誠実な医療関係者へのエールでもある作品だ。ただ、やはり人員も施設も揃っている東京の話なのだな、と。やはりそのように何度も思ってしまう事を止められない。
清宮久雄さん(ブックスページワンイトーヨーカドー赤羽店)
読み終わった今、衝撃を受けております。最初は小説として読み始めたのに、すぐにノンフィクションノベルのような、リアリティと緊張感に圧倒され、背筋が伸びていくのを感じました。この小説には医療関係者にしか分からない使命感や恐怖、そして何よりも大きな怒りが込められているような気がします。医療崩壊の映像は報道で見ていたのです。
しかし、それは医療現場の窮状を知るにはあまりに断片的で実感が乏しかったんだと本作を読んで思いました。本作を読んでいる時の方が衝撃がはるかに大きく、ウイルスの恐怖やワクチンの重要性など、三人の主人公を通じて深く刻まれたのです。まだまだ新型コロナウイルスとの戦いは続いています。今、この作品に出会えて良かった。自分にできる方法でウイルスと向き合っていきたいと思います。ありがとうございました。
高木久直さん(高久書店)
これはドキュメンタリーなのかと思わせる筆致と臨場感! 知念さんでなければ書けない至高の世界がここにある。
飯田和之さん(書泉ブックタワー)
テレビで見ているだけではただ恐い、大変そうといったことしかわからなかった新型コロナウイルスという“化物”について少しですがわかった気がしました。現場の方々がどれだけ大変だったかというのはワイドショーなどで見ていただけでも相当しんどいのだろうなということはわかっていたつもりでしたが、想像以上でした。
椎名先生のお子さんである一帆君が病気になった時の長峰先生とのやり取りが非常に印象的でした。そして涙が止まりませんでした。人間には感情がある。そこが最後には大きな防波堤となって、この恐ろしい有機機械を駆逐出来るのではと大きな希望を持ちました。
嶌田莉子さん(谷島屋書店ららぽーと沼津店)
この3年間、未知の「敵」と闘い続けた医療従事者の方々の苦悩や葛藤、そして生き方をリアルに体感できる1冊。私たちの知らないところで私たちのことを命がけで守ってくれた医療従事者の方々。私の見ていたコロナ禍というものはほんの一部だったんだなと気づかされた。テレビやワイドショー、SNSの情報だけでは知ることのできなかった、本当のコロナ禍を見ることができた。
これは本当に医療の現場に立ち続けた知念先生にしか描けない1冊だなと思った。この1冊にこの3年間、コロナ禍の医療従事者の思いのすべてが詰まっていると感じた。読んでいく中で、コロナ禍のいろいろな出来事が次々に思い出され、ページをめくる手が止まらなかった。コロナ禍を生きるすべての人々に読んでほしい1作。
峯森和代さん(スーパーカボスプラスゲオ鯖江店)
心無い言葉に傷つき、くたくたになりながらも自分がここから逃げ出すわけにはいかないと現場に残り、戦い続けてきた医師や看護師たち。そんな彼らに多くの人々が救われてきた。抑え込めたかと思えば、新たな変異を繰り返し勢力を増してくる恐ろしいウイルスとの終りの見えない戦い。強い信念を持って、この困難に立ち向かっている方々に感謝し、自分にできる感染予防対策を続けていこうと思った。一人一人が意識的に行動し、自分の身を守る対策をすることで身近な人を守り、その周囲にいる多くの人も守ることができる。正しい情報を得て、正しい行動をとる、それが大事なのだと思う。
河東優衣さん(紀伊國屋書店クレド岡山店)
苦しみ、悲しみの中で懸命に「命」と向き合っている人がいる。心身ともに疲れ、「死」を目の前にした恐怖と戦う「医療従事者」の人々。彼女らの抱える尊い想いに胸がつまる。一筋の涙が頬を伝って。押し寄せる感動の波に、心が震える。ページをめくる手が止まらず、一気読み…! 読み終わった後には、晴れ渡る青空を見上げて、「感謝」の気持ちが届きますよう、願わずにはいられなかった。「今」「この時代」を「生きる」希望の物語。明日へ。これから先、ずっと先の未来へ。生きゆく希望の物語。青空の雲のすき間から、こぼれ出る光のように。「希望の光」が心を照らしている。
鈴木裕里さん(あおい書店富士店)
これはコロナとの戦いに身を投じた3人の物語だ。知念先生は何と戦うためにこの本を書いたのだろうと、コロナと戦うために小説は要らないだろうと思っていた。でもそれは間違いだった。これはコロナと戦う最前線の人たちをそして私たちを救うために書かれた本なのだろう。目に耳にした情報を鵜呑みにする前に、自分を本当に想ってくれている人のことを思い出すこと、そして何年もみんなの命を救うために戦い続けてくれている人たちの事を忘れてはいけないと訴えかけてくる。戦いに勝つためには、それぞれが命を大切にすることが大切だ。人は負けない。この本と共に辛かったこの数年を振り返りながら、感謝の気持ちと前を向く力をもらった。
佐々木知香子さん(未来屋書店狭山店)
無知の怖さ。無責任な噂。そして、未知のウイルスの恐怖。数多のモノと闘ってくれる人達がいる。そして、大多数の人達は真実を享受しています。皆様へ感謝を。今、起きている状況を後世へ語る証人であり続ける本になる。
髙見晴子さん(紀伊國屋書店エブリイ津高店)
メディアからは伝えられなかった実際の医療現場。そこで働く医療スタッフの葛藤。本当に頭が下がる思いです。私達はこの作品を読んでどう行動すべきなのか、問われている気がしました。小さな医院から大病院のすべての医療従事者の皆様、本当にありがとうございます。
山田恵理子さん(うさぎや矢板店)
SF的なプロローグにタイトルの意味が込められて医療従事者の過酷な現場での苦悩と使命感と希望が伝わってくるドキュメンタリーのようでした。私達は生まれた時からお世話になり感謝ばかりです。真摯な人間ドラマが描かれている作品です。
石川真子さん(TSUTAYA高砂米田店)
一気に読んだ。すごくすごく凄惨で、胸がぎゅっと締め付けられた。それは本当に戦場で。
まさに命がけだった。新型コロナウイルスの脅威が始まって2年半が過ぎ、今なお戦いは続いている。先日、私もコロナにかかりました。40度の発熱、倦怠感…やはりきつかったです。
でも、それだけですんだのは、やっぱりみんながワクチンをうっていたおかげだと思います。初期の頃はワクチンも治療薬もどう変化するかもわからない未知のウイルスとの戦場で働いていた医療従事者の方々の恐怖ははかり知れなかったと思います。本当に頭が上がりません。感謝しています。
まだ、ウイルスは静かに変異を繰り返し、生き延びようと勢力をのばす。人はその変異に対抗するためのワクチンや治療薬などの武器を作って立ち向かう。本当に戦争だ。救われた命が戦う人々の思いを無駄にしないように、精一杯自分を守っていこう。
山中真理さん(ジュンク堂書店滋賀草津店)
コロナに感染することは他人事ではない。ある見方から医療従事者への家族への差別、偏見、それを思うと心が痛い。子供に注意すべき大人がそう吹き込むなんて、コロナにもしかかって誰に治してもらうのか? 自分が感染するかもしれない、そして家族を巻き込むかもしれない不安と緊張と葛藤の中で神経をすり減らし闘っている人の叫びがあった。逼迫した医療現場のリアルがここにある。
特別な人が助けているわけではない。同じ苦しみ痛みをもった生身の人間が医療現場で色々な思いをかかえながら必死で闘っている。「俺は瑠璃子を誇りに思うよ」という言葉に涙が出て、コロナと共存していかなければならない今、医療現場で闘っている人の負担を少しでも減らしたい。何かできることはないか。この作品を読んで希望へとつなげるような行動をしていきたいと思った。自分を見つめ直しました。
毛利晃子さん(未来屋書店桑園店)
蝕まれていく日常の中、戦う人達の姿に胸が熱くなり、何度も涙が出てしまいました。今生きる私達には心苦しい話でしたが、目を背けてはいけないと思う一冊でした。
原田里子さん(マルサン書店サントムーン店)
今までたくさんのコロナに関する情報が流れてきたが、情報源はどこだったのか。その中に医療現場の言葉がどれだけあったのか。現場では次々と発表される情報に、不安と希望の気持ちが入り乱れ、不安にさせる要因のひとつは私たちの情報に踊らされる姿だったのではないか。私は何冊「コロナ」「ワクチン」と題された本を並べてきたのだろう。そのことが現場を追い詰めることになっていやしなかったのか。
この本と向き合っていると様々な問いが浮かび、私自身に憤ったりしてごめんなさい、ありがとうございますと涙が溢れてきた。行動制限がないと免罪符のようにしきりと言われていた2022年の夏、医療従事者の「どこにも行かない。家族にも旅行は駄目だと言っている」と言っていた言葉が胸に刺さる。
山田由樹さん(本と文具のBSさんわ)
読み進めながら、自分はこの時、何をしていただろう、何を考えていただろうかと思い出していました。登場人物はフィクションでもこの物語は私達の現実を描いていると思いました。
物語(コロナ禍)は今も続いている。その希望と絶望と事実を抜き出して知念先生は見せてくれたのだと感じました。物語として読みごたえがある、面白い、引き込まれる! そう思ったけれど、医療現場にいる方々はこれよりも多くの絶望の物語と向き合っているのでしょう。ぜひ続編を希望します。
※本作品の印税の一部は、新型コロナウイルスなどの感染症拡大防止への対応のため、日本赤十字社に寄付されます。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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