「この人の特別を私は理解できる」
Eさん 私は「プルースト効果~」と「春は未完」は似ているなと思ったんです。「プルースト効果~」は男子と女子、「春は未完」は女の子同士ですが、どちらの作品の主人公も、まだ自分というものがよくわからなくて、自分がどんな人間なのか知りたいという気持ちが根底にある。でも、相手の中に自分を見るという形でしか自己認識できなくて、ちょっと変わっている人と仲良くなった“この人のことがわかる自分”に特別さを感じてるんだと思うんです。
Dさん “他と違う子を理解できる私”っていう感覚、すごくわかります。自分が特別なんじゃなくて、「この人の特別を私は理解できる」っていうところに、「あ~~!!」って。
Aさん この感覚、すごく心当たりがありますよね。
赤坂さんは、その場で飛び跳ねそうな勢いで言葉を続けた。
「だから突然だけど青山さん、わたしたちもシティガールズ、結成しませんか」
多少想像とは違ったけれど、わたしが赤坂さんに抱いていたのと似た気持ちを、赤坂さんも感じてくれていたのかもしれないと思った。(「春は未完」)
Eさん 自分たちにグループ名つけてる人たち、いましたよね! そんなの恥ずかしいなって思いながら見てたけど、でも、できる時にやっているのは羨ましいかな。
Dさん 「春は未完」は、ちょっと変わった、おもしろい青春の話だったのが、最後に一転してゾクッとなるような、ビターな雰囲気になって、すごく興奮しました。赤坂さんの語った松戸先輩の話も、どこか少女漫画のようだなと思っていたのが、最後に本当のことがわかった時に、「やっぱり!」って。
Fさん 私もこの小説がすごく好きだったんですけど、感想を言葉でうまくまとめるのが難しくて。
佐々木 なんか、すみません……。
Fさん 急にパンダの話から始まったので、「これは何だ!?」と思っていたら、自分たちの世界観を持った二人の女の子の、青春小説でした。でも、最後に、実は主人公の青山さんは、赤坂さんが作ったシナリオどおりに動いていたと分って……。赤坂さんは、小説を書こうとして書けなかったんですよね。自分が主人公になれる何かを作りたくて、でも、それができなかったから、読んだ小説に自分から近付こうとした。赤坂さんは、ちょっと変わった性格の子だと思ったんですが、もともとそうなのではなくて、こうなりたくてなったのかもと思うと、何だか切ないというか、苦しいというか。
Aさん 最初に出てくるパンダの交尾の話が、青春の気まずさを象徴しているように思えました。友だちに彼氏ができて、その恋愛の進む状況を楽しく聞いているはずなのに、なんだか気まずくて、想像したくない、あの感じ。
Dさん 佐々木さんの作品には、パンダやシロクマといった動物がよく出てきますが、動物がお好きなんですか?
佐々木 はい、特にシロクマは好きです。私は小川洋子さんの作品に日々支えられながら生活しているのですが、中でも動物の描きかたがとても好きで、それに勝手に憧れているのかもしれません。
“読んでいて人間が好きになれる小説”が書けるようになりたいと思っているのですが、小川洋子さんの作品の中での動物への目線の優しさ、おもしろさは、そういう小説に欠かせないもののような気がしています。
Dさん これから、新しい動物が出てきたりするんでしょうか。
佐々木 まずはシロクマを極めたいと思います……!
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