担当編集者より

子どもの頃に読んだ絵本や児童書には必ずといっていいほど名前が刻まれていた伝説の人、日本の児童文学の礎を築いた石井桃子は、浦和で大勢の兄姉に囲まれた幼少期を送る。石井の豊かな才能と感受性の源を知る鍵はここにあった。他にも、太宰治に好意を寄せられた話、井伏鱒二との「ドリトル先生『アフリカ行き』」の誕生秘話など、読み応え充分。

「スタッフ一同がひとしきりガキの私の御機嫌をとってくれる」と、子役時代を振り返るのは名優・高峰秀子。スター気取りの全く感じられないエッセイを書いた。まともに小学校生活を送れなかったが、周囲の大人を圧倒する鋭い思考と頭の良さは天下一品。学歴ではなく、その人がどう考え行動して生きてきたか、英知の塊のような人がいたのだと実感できる。

２人の才気あふれる随筆を厳選したのは、川上弘美さん。人生がまるごと文章から感じられる名随筆をぜひご堪能ください。