- 2013.12.04
- 書評
ゴルフには「メンタル」という魔物が棲んでいる
文:永田 玄 (編集プロダクション主宰)
『ゴルフに泣かされた夜あなたが心にきざむスコアメイクの具体策』 (永田玄 著)
ジャンル :
#趣味・実用
私は42歳でゴルフを始めましたが、スタートが遅かっただけに「上達への最短距離を走りたい」という焦りにも似た思いに突き動かされてきました。さしたる運動経験もなく、体格にも恵まれず、時間やお金にも限りがあるなかで「上達への抜け道探し」を模索するうち、先輩方からのアドバイスや自分で気づいたことをメモに残すようになりました。昨秋刊行した『ゴルフに深く悩んだあなたが最後に読むスウィングの5ヵ条』は、それらのメモをもとに、ボールを狙った方向に真直ぐ運ぶためのスウィングを言語化した技術書でした。
ゴルフのレッスン書というと写真やイラストレーションがつきものですが、あえてそれらを一切使わずに言葉だけでスウィングのメカニズムを解明しようとしたのは、ゴルフには言葉をめぐる誤解があまりにも多いことを実感したからです。一例をあげましょう。誰もがレッスンプロに「クラブを挙げて」と言われた経験があるかと思います。しかし正しくは、クラブは挙げるものではなく、上体を捻転させた結果としてクラブが「挙がる」のです。慎重に言葉を選びながら、ゴルフのスウィングという実に複雑な動きを、「立つ」「捻る」「遠心力」「管理」「連動」という五つの言葉だけでアタマと身体にしみこませることに腐心しました。
幸いこの前作には望外の反響をいただき、私自身もゴルフがわかってきたような気になっていました。ところが実際には、ゴルフの奥深さをまったく理解していなかったことがわかりました。ある試合で105という近年にない大叩きをしてしまったのです。前日の練習ラウンドでは75だったにもかかわらず、歯車が一度狂うと30打も余計に叩いてしまうのがゴルフの難しさなのでしょう。そして身が震えるほどの屈辱に苛まれながら思い至ったのは、ゴルフにはテクニックとは別の「メンタル」という魔物が棲んでいるということでした。
2作目にあたる『ゴルフに泣かされた夜あなたが心にきざむスコアメイクの具体策』では、すべてのゴルファーが持てる力を存分に発揮するための注意点を、メンタル面に重点をおいてまとめました。
ゴルフというゲームの難しさの本質を理解し、そのうえであなたがどのようなゴルフを目指すかを明らかにし、どのような練習を重ね、プレー当日までをどう過ごすかをイメージするためのヒントを考えられる限り綴り、さらにアプローチ、ドライバー、パターについて即効性のある対処法を記しました。ウッドであれ、アイアンであれ、パターであれ、目的はただひとつ、ボールを正確にヒットするということです。詳しくは本編をお読みいただきたいのですが、右利きプレーヤーの場合は左肘が大きな役割を果たします。
ここではアプローチを例にとって、ポイントをご紹介します。
●膝と腰が安定するバランスのとれたスタンスを探す
●ボールはできる限り右足寄りにセットする
●芝の上を引きずるようにテイクバックする
●距離の短いアプローチでもつねに加速するスウィングを心がける
これらを守るだけで、ダフリやトップなどのアプローチのミスは激減します。次回のラウンドで是非お試しください。
どこにでもいる腕前の私ですが、ゴルフという魔物との格闘の末、おこがましくもレッスン書を2冊も出してしまうことになりました。前作『ゴルフに深く悩んだ~』は、“技術の間”に迷い込んだ私の攻略地図だといえます。もしもあなたが80を切ることを目標にしているのであれば、今作『ゴルフに泣かされた夜~』と併せてお読みいただければ、一層のお力になれるのではないかと思います。一方、今作は“技術の間”をボロボロになりながら通過した私の前に立ちはだかった第2幕“メンタルの間”の様子を記したもので、ボギーペースでのラウンドを目指す方への攻略本となればこれにまさる喜びはありません。
私のゴルフとの20年にわたる格闘の記録はこの2冊でひとまず完結しますが、まだまだ迷宮から抜け出したわけではなく、これからも悩まされるに違いありません。人間が600年も続けてきたゴルフというゲームは、自分を映す鏡のように思えてならないのです。
ゴルフに泣かされた夜あなたが心にきざむスコアメイクの具体策
発売日:2013年11月15日
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