最新刊の『壇蜜日記2』(文春文庫)には未収録、この暑い夏の日常を徒然なるままに――。
2015/8/9 晴れ
昼過ぎまで寝て、夕方にまた眠くなる。夏バテなんですといって寝てばかりいる割にアイスもクーラーも心地よくてやつれない。暑さに負けているというからには、もっと食欲が減退しぐったりしている姿を保ちたいが、食事はいつも通りできるし顔色も悪くない。仮病だとなじられても仕方がない。美容院で髪の手入れをしてもらい、タオルケットを買って帰宅し、漫画を読んで猫を洗う。今月も先月同様、また二回猫を洗うことになりそうだ。今更だが、猫に三十九度弱の湯温は合っているのだろうか。
2015/8/10 曇り⇔小雨
ステッカーが出来上がった。三百枚注文していたが印刷のやり直しをしたらしく、依頼したものの他に少し色の濃いバージョンが三百枚置いてあった。それなら買い取ると提案したが、依頼の品の試作なんて売れないからあげると言われる。三百も一千も同じ料金だとは言っていたけど、何だか申し訳ない。今手元には六百枚のステッカーがある。お盆前の注文殺到で、さぞかし忙しかったであろう。それにも関わらず、新参者の依頼も引き受けてくれたので本当に嬉しかった。
2015/8/11 晴れ
久しぶりに男と会う。ずいぶん日焼けをしていて体のあちこちの皮がむけていた。あまり黒い男は好きではない。小麦色のはすっぱな女はかわいく見えるが。日焼けすればモテると思っているのだろうか。女も痩せればモテるという呪縛に振り回されている気がするのでどっちもどっちではある。日焼け以外は特にかわり映えもなく、相変わらずこちらの聞くことには「わかんなーい」「しらなーい」と返してくる。考えるふりもしなくていい位、私に心を許してくれているのね……と思うことが半分、いまに見てろよが半分。
2015/8/12 晴れ
好きな男が出ている映像を流し、動きに合わせて自分の声をあてる。この職業を行うものにだけ許された行為だろう。お互いに俳優、声が特徴的なタレントでなかったらこんな機会に遭遇することもない。仕事は仕事として取り組むが、この声当て作業は好みの男を見つめすぎ、気が散ってしまいそうになるのでよくない。嫌われものも長いことやっていると、誰かが価値を見いだしてくれるものだと改めて思う。愚鈍、短足、変な声……これら全てわずかだが金になっているじゃないか。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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