2009.09.20 インタビューほか

憂鬱の肯定から始まる物語

「本の話」編集部

『憂鬱たち』 (金原ひとみ 著)

憂鬱の肯定から始まる物語

──新刊の『憂鬱たち』は七篇からなる連作短篇集です。

金原  デビューからずっと中篇、長篇を書いてきて、短いものを書こうと思っても、どうしても百枚、二百枚の分量になってしまっていたんです。この本の第一章「デリラ」は、「短篇を」という依頼を受けて書いた初めての短篇で、この時はすんなり書けました。俗に言う「短篇期」が私にも来たのかなと思いました。実際にその後ずっと短篇ばかり書いてきて、やっと最近、長篇に取りかかりたいなと思い始めたところです。

──七篇を寄せ集めたというのでなく、統一したコンセプトのもとに書かれていますね。タイトルがすべてカタカナ三文字であるとか、神田憂、カイズさん、ウツイ君という登場人物が共通しているとか。

金原  最初の「デリラ」の段階では統一した構成は考えていませんでした。二篇目の「ミンク」を書き始めた時、やはり“女男男”の三人の登場人物を想定していたので、だったら「デリラ」と同じ人物を出してしまおうかと考えたんです。

──登場人物の名前をつけるのに苦労されるそうですね。

金原  この短篇集では名前とか職業とか、そういうアイデンティティーで人物像やシチュエーションを狭めてしまうのが嫌だったので、名前だけ同じにしてそれ以外は全く統一性のない人物、状況を描くという方法をとりました。AとかBのような記号の名前でも良かったんですが、それだとあまりに情緒がないので。登場人物それぞれ外見は共通にして、同じ俳優さんにいろんな役を演じてもらうような感じにしました。毎回登場する二人の男性の容姿にははっきりしたイメージがあるんです。カイズさんは髭(ひげ)を生やしていて禿(は)げかけでうだつの上がらない中年で、ウツイ君は背が高くて端正な顔立ちだけれど痛い青年というイメージです。

憂鬱たち
金原 ひとみ・著

定価:1200円(税込) 発売日:2009年09月30日

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