インタビューほか

[特別インタビュー]
浜田 満 建英には“バルサスタイル”がある

「本の話」編集部

『おれ、バルサに入る!』久保建史

――何が評価されたのでしょう。

浜田 バルサが技術以外の面で評価するのは、フィジカルよりも判断力、理解力などで、サッカーというスポーツを根本的に理解したプレーができるかどうか、です。日本や欧州の他のどのチームとも、選手を見るポイントが違います。

たとえば、セスクは体も大きくないし、足元のボールさばきもたいしてうまくない、スピードも遅い。他の欧州クラブや日本だったらトップチームに上がれないどころか、下部組織にも入れていなかったかもしれません。

でも、ボールを持っていない時の動きが絶妙で、スペースを見つけるのが格段にうまく、そのスペースを使うタイミングも素晴らしいです。バルサが評価するのは、このようないわゆる“バルサの特徴”を持っている選手で、建英もまさにその一人だと思います。

僕自身が建英を一番評価するのは、この年齢にしてすでに、将来にわたって変わらないであろう得点スタイルを持っているところです。

たとえば、4月の初めに「ペララーダトーナメント」という大会がありました。レアル・マドリードやベティスなども出場しましたが、建英の所属するバルサのアレビンCチームと、ビジャレアルとの決勝戦になりました。

その試合中のゴール前、半身の状態で左足にパスを受けたシーン。そのまま前に行って右足でシュート、と誰もが予測します。が、その瞬間に左へ切り返し、左足でまいてシュートを決めた。

今後、年齢が上がるにつれて切り返しの速度やシュート力が磨かれるでしょうが、このスタイルそのものはずっと変わらないはずです。ゴール前でこういう受け方をすれば確実にこのパターンで得点がとれる、というそんな型を、他にもいくつも持っています。

また、建英は試合の中ではゆったりといくところと、一気にギアチェンジする緩急の付け方がすごいですね。メッシなど一流選手によくありますけど、8割の力でやっていて、ここぞという時には100%の力を出す。そんなこともできるのです。

5月1日にチームがリーグ優勝を決めた試合映像を見たのですが、建英がボールを持った瞬間、「ドリブルで行くな」とわかりました。その通り、1人で3、4人をかわしてそのままシュートを決めた。後で本人に聞くと、

「あの時、交代のラインにニル(チームメート)が立っているのが見えたんだよ。俺が代えられるんだな、ここで入れとかなきゃ、と思って」

と言っていました(笑)。思っただけでなく実際に得点できるのが凄いところです。

――評価の高いメンタルの強さについては、どう思いますか?

浜田 ご両親の育て方は大きいでしょうね。お父さんは、徹底して「考えさせる」ように心掛けてきたと思います。建英を子ども扱いせず、常に自分で考えるクセをつけさせたのですね。だから、建英は感情を爆発させる前に、冷静に考えることができる。

スペイン中からガキ大将が集まってきているような現在の状況は、相当なストレスになっているはずです。ましてや、たった一人の日本人です。その中でよく冷静さを保っていると思います。

それには、もう一点、環境の変化に慣れるように育てられたからでもあるでしょう。小さい頃からご両親がさまざまな環境に建英をあえて放り込み、環境の変化に対する耐性をつけさせた。これは、今日の建英を語る上で、実はすごく大事なポイントなのだと思います。

子どもは親が機会を与えてやれば、相当柔軟に変化することができるものです。弊社が運営しているバルサスクール福岡校のスペイン遠征でも、参加の前後で子どもの様子がガラッと積極的な方向へ変わることが多いです。

サッカー界の将来のためにも、一人の人間として大きく育てるためにも、やはり「可愛い子には旅をさせよ」なのだと僕は考えています。

 

おれ、バルサに入る!
久保建史・著

定価:1260円(税込) 発売日:2012年05月26日

詳しい内容はこちら

『おれ、バルサに入る!』特設サイトはこちら