真面目なのにコントになってしまう人生
――会ったその場で連載が決まったそうですね。
大宮 ええ。なんか、自由に喋ったら、面白いからまず書いてみましょうか、と。そもそも、私が連載をやりたかった理由が、人から、私の些細な失敗談とかが面白がられて、「お前、あの、ビキニでブラジルを走った話をしてあげてくれよ」とか言われるんです。それが何度もなので、面倒だな、そういう話を連載にしたら、いちいちみんなに同じ話を何度もしなくていいなと考えていて。省エネですね。
よく初対面の人に話す自虐ネタ、話してとリクエストされるネタ、などをきちんとエンタテイメントとして書いていきたいと。私から聞いた私の失敗談が、色んな人に語り継がれて、「聞いたよ! 君、◯◯なんだってね!?」と笑われることがあるんです。つまり、落語ですよね。ちょっとした、人に言いたくなるような哀しく笑える小咄(こばなし)。それでいこうと、その場で決まりました。
――リオデジャネイロではビキニで住宅街を走り抜け、イグアスの滝ではアライグマに取り囲まれ、初めてハワイに行ったらそこで二十三年ぶりの大地震が起き、おみくじで七回連続で「凶」を引いたりと、まさに落語のような話ですね。
大宮 このあいだ、よく仕事をするスタイリストの伊賀大介さんから、エリーさんは面白いエピソードを引き寄せる力がある、それが才能だ、と言われたんです。あ、文章も上手ですよ、もちろん、とフォローされましたが。でも、そうかもしれないな、と。想像力とか、構成力とか、そういうことが優れているというより、ただ私には、巻き込まれ力、がある、ってだけなんですよね……。
先を読めないというのか、とりあえずやってみようと思うんです。頭のいい人はこうやればこうなると筋道を立てて考えられるんでしょうけれど、私はやってみてすぐにガーンと壁にぶち当たって、流血状態になるんです。本当はせつない話なんですよ。
我が家ではゴキブリを、熱湯をかけて退治するという話を二回書いているんですけど、二回目の時は、いつもよりも熱湯を多くわかしすぎて、しかも高いところにゴキブリがいたため、ゴキブリにかかるはずの熱湯が私に降りかかり大火傷(やけど)。そんな情けない話に、すごいですね、文春って、お便りがくるんです。「最初のゴキブリ退治の回のときにもっと効率的なゴキブリ退治の方法をお教えしておくべきでした」という主婦の方からの温かいお便り。なんか嬉しかったです。毎週、直筆のお手紙やらファックスやらいただけるのは、週刊誌ならではですよね。
母(おかん)ネタでは、犬を飼いたかった私が、何度かおかんに駄目だと言われていたのに、説得しようと試みたら、いきなり、おかんが、ワンっ、と言い出し、何かと思ったら、「そんなに犬が欲しかったら、おかんが犬になったるわ」。みんなは笑ってくれるんですが、当事者は結構辛いんですよね。辛い日々の衝撃的な出来事を、笑いに変える作業を、作家としてやっている、という感じです。