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芥川賞受賞作『コンビニ人間』を、コンビニで働く人たちが読んでみた

芥川賞受賞作『コンビニ人間』を、コンビニで働く人たちが読んでみた

『コンビニ人間』 (村田沙耶香 著)


ジャンル : #小説

「普通」って何だろう? 他人中心の古倉と自分中心の白羽

 よく取りざたされている「普通とちょっと違う人」。現代人の心理的・精神的な部分を、それとは全く関係のなさそうに思えるコンビニに重ねあわせて上手に書かれた作品。細かな描写がとてもリアルで、コンビニで働く人間としては、読んでいて「そうそう! あるある!」という気持ちにページをめくる手がどんどん進んだ。登場人物も実際にいそうな人ばかりで、思わず自分の職場を重ねてしまう。コンビニ職に従事する人にもそれ以外の人にも、リアルに描かれた情景に自分を重ねて楽しく読めるはず。

(30代 女性 店舗勤務)


 世間の目は容赦ない。コンビニ店員として居場所を見つけた彼女も例外ではなかった。

 常に「普通の人間」かどうか品定めされる。異質なものを排除しようとする人たちに。

 他人が喜ぶ自分になっても意味が無い。しかし彼女はもがきながらも導き出した答えへとつき進む。そんな彼女の信念と行動力は見習うべきものがあった。コンビニという身近な舞台であり、働き方や自分らしさとは何かを考えさせられました。

(40代 男性 店長)


 古倉と白羽の相反するのだけれど、社会で上手くやっていけない2人の物語でしたが、現代社会においても、大多数の人は社会で隠して過ごしているだけで、この2人とあまり変わらないのではないかと感じました。他人中心の古倉と自分中心の白羽、世の中、みんなこの間で揺れているのではないかと思います。

 私もコンビニの店長という立場ですので、古倉の勤めているコンビニが、優秀なコンビニだということがすぐに分かります。これはコンビニ店員ならではの楽しめる部分ではと感じます。

 古倉が社会的に能力が低い人間なのかというとそんなことは無く、分析力、判断力、行動力、記憶力はずば抜けていると読み取れます。ただ、これは特に日本の多くの会社に言えることですが、日本は平均的に何でもできる人が求められる社会です。この本を読んだ人が、高い能力を持っていても活かしきれない、今の日本の社会や会社のあり方、考え方を見直すキッカケにもなればと思います。

(20代 男性 店長)


 全国に5万店あるコンビニに24時間、365日、コンビニの灯りがともっていることは、現代の日本の生活の「普通」だ。しかし、「普通」を支える一見単調なように見えるコンビニスタッフの仕事には、現代の便利を解決するあらゆる商品・サービスがつまっている。まさに極上の「普通」を極めるために各チェーンがしのぎを削っている。

 そんな中で幼いころから「普通でない」というコンプレックスを抱える古倉が、優秀なコンビニの店員という「普通」の仮面を通して、社会と接していこうという考えが何とも面白い。白羽という真逆なキャラクターとのかかわりを読んで、誰もがちょっと普通じゃない自分を持つことで、バランスを取っているのかなと感じた。

(40代 女性 本部勤務)

【次ページ】コンビニは「人」で成り立っている

コンビニ人間
村田沙耶香・著

定価:本体1,300円+税 発売日:2016年07月27日

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