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今時の若者を小説で読もう!親世代にお勧めの5+5冊

文: 大矢 博子

 有名な都市伝説に「古代エジプトの古文書を解読したら、『今時の若者はけしからん』と書かれていた」──というものがある。どうやら柳田國男『木綿以前の事』(岩波文庫)で又聞きとして紹介された話が元らしいが、実際には現状を憂える文言や若者へのアドバイスはあっても、若者批判の史料はないのだそうだ。

 それなのにネタとして何度も使われるのは、「自分が言われて反発したことなのに、いつの間にか下の世代にも言っちゃうよねー」という苦笑まじりの実感が、誰にもあるからだろう。それはわかっているのだけれど、それでもやっぱり感じてしまう。今の子はわからん、自分たちの頃とは随分違う──と。

 夏休み、お盆休み、帰省などなど、我が子と過ごす時間が増えるこの季節だからこそ、「今時の若者」を小説で読んでみよう、と提案したい。小説はいつの時代も「今の若者」を描いてきた。なぜ「今の子はわからん」のか、本当に「自分たちの頃と違う」のか、ヒントがここにあるはずだ。中学生からロスジェネまでの世代を描いた5冊を紹介する。

    ◇    ◇

『オーダーメイド殺人クラブ』 (辻村深月 著)

 辻村深月『オーダーメイド殺人クラブ』(集英社文庫)は、中学2年生の小林アンが主人公。アンはクラス内でも上位の「リア充」グループに属す美少女だが、微妙な友人関係や価値観の合わない母親など、学校でも家でも疲弊するばかり。そんなとき、クラスでも下層の少年・徳川に思わぬ「才能」を見たアンは、「自分を殺して欲しい」と頼んだ。ふたりは永遠に人に記憶されるような「特別な死」の計画を練り始める。

 美しい死や残虐なものへの憧れ。特別でありたい。自分が特別だと人に分からせたい。そんな思春期の心の揺れが奔流となって出口を探す。本書の中核にあるのは「中二病」と「スクールカースト」だ。そんな名前が与えられたばかりに、まるで現代特有の病理のように思われるが、思春期特有の肥大した自我を持て余すのもクラス内派閥も、いつの時代もあったこと。その真っ只中にいる彼らの懊悩を見て、身に覚えをまったく感じない大人はいないのではないか。

【比べて読みたい「あの頃の若者」小説】

『ぼくは勉強ができない』 (山田詠美 著)

山田詠美『ぼくは勉強ができない』(文春文庫)

 1993年に刊行されて以降、若者のバイブルとなった物語。勉強はできないがめっぽうモテる高校生を主人公に、「かっこよくある」とはどういうことかを軽やかな筆致で綴る青春小説の金字塔。

    ◇    ◇

『何者』 (朝井リョウ 著)

 認められたい、はじかれたくないというメンタリティはいつの世でも普遍。変わるのは人ではなく社会制度の方だ。昭和とすっかり様変わりしたもののひとつが就活だろう。朝井リョウ『何者』(新潮文庫)は、就職活動に励む大学生たちの物語。エントリーシートにウェブテストと、昭和の就活組には馴染みのない言葉が並ぶ。今の就活ってこうなのか、と驚くこと請け合い。

『何者』の登場人物たちがその前の世代と明らかに違うのは、デジタルネイティブだということだ。物心ついたときから当たり前のようにネットがあった彼らは、ツイッターやFacebookを使いこなす。発信に長けているのが今の若者の最大の特徴かもしれない。だが『何者』では、それが「こう見られたい自分」と「本当の自分」の乖離につながっていく。自分は何者なのか、何者にならなれるのか。若者が悩むべくして悩む問題が、SNSというツールを通して浮き彫りになる様を味わっていただきたい。

【比べて読みたい「あの頃の若者」小説】

『抱く女』 (桐野夏生 著)

桐野夏生『抱く女』(新潮社)

 70年代、学生運動に乗り遅れ、ウーマンリブにも違和感を感じる女子大学生の彷徨の記録。当時の世相をリアルに描きながら、自分が何者かを探す若者の姿が活写されている。

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ロスジェネの逆襲
池井戸潤・著

定価:本体700円+税 発売日:2015年09月02日

詳しい内容はこちら
大矢博子さんによる『ロスジェネの逆襲』読書会(週刊文春WEB)

コンビニ人間
村田沙耶香・著

定価:本体1,300円+税 発売日:2016年07月27日

詳しい内容はこちら



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